凄い人でした。凄い熱気でした。日比谷公会堂が超満員でした。JR東労組の人々が結集し、又、その闘いを支援する人々が結集しました。不当判決に対する抗議と怒りの声で日比谷公会堂がどよめき、揺れていました。
10月31日(土)、午後12時50分から始まりました。「弾圧から7年、労働組合活動を犯罪とした暴挙に対し、上告審に勝利する! 10・31集会」です。
7年前の〈事件〉については、私も『公安警察の手口』(ちくま新書)の中で詳しく書きました。結論から言えば、公安の組合潰しです。組合活動そのものを「犯罪」として、7人の組合員を逮捕したのです。立川でビラを郵便受けに入れただけで逮捕される事件もありましたが、あれと同じ、あるいはそれ以上の露骨で、陰湿な公安犯罪です。
7年前の2002年11月1日。警視庁公安部は「強要罪」容疑でJR東労組の7人を逮捕しました。そして344日間も勾留したのです。第1審では全員有罪。そして、JR東日本会社はこの第一審判決を唯一の理由として、懲戒解雇処分にしたのです。控訴しましたが、東京高裁は控訴を棄却。7人はさらに上告審に向けて闘っております。
こう見てくると、何やら凄い〈事件〉を起こしたように思えるだろう。だって、7人が逮捕され、1年もぶち込まれ、会社はクビだ。「暴動」「テロ」か、「犯罪」を犯したと思われるだろう。たとえば、労組員が違法ストか暴動を起こし、暴行の限りを尽くし、会社をぶち壊したのか…と。ところが、〈事件〉とは呼べないほどの、何とも些細な「口論」なのだ。JR東労組の中にいたY君という人が、組合の悪口を言った。組合を辞めようとした。それでJR東労組の人たちは引き止め、口論になった。それだけの話だ。別に、脅迫があったわけでもない。暴力沙汰があったわけでもない。どこにだってある普通の光景だ。Y君は半年後、組合を辞め、会社を辞めた。それをもって「強要罪」を公安はデッチ上げた。
口論があったというだけで、無理矢理、Y君への「強要罪」という罪をデッチ上げて7人を逮捕した。とても〈事件〉と呼べないものだ。
逮捕された7人は、奇妙なことに、〈事件〉である口論や強要については調べられず、「お前らは革マルだろう」「組合を潰してやる」と連日、警察で脅された。怒鳴られ、「組合を辞めろ」と強要された。脅迫、強要してるのは警察の方だ。
「組合が平和運動をするなんて生意気だ!」とも言われた。ともかく、組合活動は警察にとっては目障りだったのだ。
JR東労組は前から狙われていた。それは事実だ。だって、ここだけが活発な組合活動をやっている。平和運動もやっている。今は、どこも労働運動は停滞している。死に絶えている。だから、会社による首切りだって、やられ放題だ。昔、組合が強い時は大変だった。ストライキだってやった。経営者は勝手にクビを切れなかった。それだけ労働者の人権が守られていたのだ。今のように、労働者が簡単にクビを駆られる状況は、労組が弱くなったからだ。労働者を守り、闘う組合がなくなったからだ。
そんな中で、JR東労組だけは、団結し、頑張っている。権力・警察にとっては目障りだ。それに輸送にかかわる部門の労組だからだ。「戦争をやりやすい国家にするめだ」と言う人もいるが、権力は、そこまでは思わないにしても、この組合を何とかしたい。その思いはある。だから、「JR東労組は革マルだ」「過激派だ」「テロリストだ」と、デマ宣伝を流し、週刊誌もそれを真に受けて書くところも出る。
立川ビラ事件の時も、「これは市民運動ではない。中核派がやっているのだ」とデマ・キャンペーンが流された。市民派がデモや集会をやっても、「いや、過激派が裏で糸を引いているのだ」と言う。公安が、言っているのだ。陰謀説と同じだ。「全ての裏に過激派がいる。いつもテロや暴動を計画している。だから取り締まりが必要だ。公安は必要だ」という理屈だ。自分たちの存在証明と生き残りをかけて、次々と〈事件〉を作り出しているのだ。
それに人々は、「過激派キャンペーン」には弱い。「過激派が入り込んで騒いでるんだろう。じゃ、ダメだ」「過激派じゃ、逮捕されても仕方ない」と、思ってしまう。
左翼っぽい人だってそうだ。「JRの事件は確かに冤罪だろう。でも革マルだから仕方がない」と切り捨てる。JR東労組は革マルではない。でも、「革マルだ」とレッテルを貼られる。そして人々は、そのレッテルだけを見て、「危ない」と判断する。
10月31日の集会で、シンポジウムに参加した佐藤優さん(作家)は言っていた。「これは明らかに冤罪です。公安による組合潰しだ。ただ、JR東労組は革マルらしいと言われている。そして、公安を批判すると、“お前は革マルに味方するのか”と言われる。それが怖くて、ものを言えない人が多い。でも、それは卑怯だ。“革マルに味方した”と批判されてもいい。正しいことは正しいと言うべきだ」
なるほどと思った。知識人、評論家の〈弱点〉をえぐっている。これは公安の弾圧だ。冤罪だ。でも、そう言うと、「革マルに味方したのか!」と批判される。あるいは、そう誤解される。それが怖くて、じゃ、発言は控えよう、となる。
私だって、最近は、「革マル寄りだ」と言われる。ある集会に講師で呼ばれた。左翼の人の集まりだ。でも、直前で断られた。「鈴木はどうも革マル寄りだから」という理由だ。信じられなかった。「右翼だから」という理由で断られたことは何百回もある。でも、「革マル寄りだから」なんて…。でも、これは名誉なことかもしれない。
逮捕されたJR東労組の人も、誰1人として革マル派いない。でも、警察では「お前は革マルだろう!」と怒鳴られる。「革マルって何ですか?」と聞いて、又、怒鳴られたそうだ。
百歩譲って、革マルだっていい。「革マルだから弾圧されていい」ことにはならない。権力や週刊誌のデマに抗議する余り、「革マルではない」ことばかり強調する。「それは必要ないじゃないか」と佐藤優さんは言っていた。私もそう思う。しかし、革マルではないし、そんなレッテル貼りをして、組合潰しをされるのが許せないのだろう。
「革マルや中核派だから弾圧していいとはならない。でも、JR東労組は革マルではありません」と私は、言った。集会のあとの打ち上げの席上だ。「だって革マルならば、もっとうまくやる。こんなズサンなことはやらない」と。組合の混乱を狙うY君と話し合う時だって、革マルならば、もっと慎重に、用意周到にやるだろう。あとから言いがかりをつけられないように。「討論場面」はテープやビデオに撮る。第三者も入れて、「強要罪」などに引っかけられないようにする。
その点、JR東労組はズサンだ。組合活動で、引っかけられて逮捕されるなんて考えない。お人好しなんだ。「そうか。こりゃ参った」と逮捕された人たちも苦笑していた。それに、革マルならば、もっと組織防衛が徹底している。排他的だ。私のような人間を呼んで、一緒に集会をしたりしない。私は、早大などで何度かサークルに呼ばれて講演に行こうとしたが、革マルに阻止された。「右翼は、大学には一歩たりとも入れない」というのだ。排外主義的で、閉鎖的だ。その点、JR東労組とは全く反対だ。
この集会には「新党大地」の鈴木宗男さんも来て、「連帯の挨拶」をした。又、民主党の今野東さんや、横山北斗さんなど大勢の議員が来た。「革マル寄りだ」と批判されるかもしれないのに、勇気ある議員だと思った。感動した。又、韓国や台湾など海外の労働組合の委員長も来て、連帯の挨拶をしていた。凄い。
パネルディスカッションも中味の濃いものだった。佐藤優氏、浅野健一氏、中村忠史氏、小黒加久則氏の4人のパネラー。コーディネーターは山口正紀氏だった。
終わって、浅野健一さんと話をした。「政府はムダ遣いをやめるというなら、公安や公安調査庁をまず廃止すべきだ」と浅野さん。賛成ですね。レッテル貼りをして、組合潰しをしている。又、共産党に対しても、「暴力革命をやろうとしている」といって未だにスパイを送って、監視し、大金を使っている。「だったら、スパイを送って共産党を強くしてやればいいのに」と浅野さん。これはいい。と笑ってしまった。
さて翌日、11月1日(日)は、愛知県豊橋市に行った。午後1時半から5時まで、アイプラザ小ホールで講演会。第1部は、「左右討論。政権交代!日本の選択を語る」。第2部は、会場の皆とフリートーク「日本のこれからを考えよう」。
第1部の「左右討論」は、「右」は私らしい。でも「左」の八名見江子さんは知らない人だ。誰なんだろうと思ったら、何と、早見慶子さん(作家)だった。そうか。早見さんが、ペンネームを使っているのかと思ったら、違った。八名見江子が本名で、早見慶子がペンネームだという。ペンネームの方が地味で、本名の方が派手だ。
それに早見さんは、ここ豊橋市の出身だ。だから、高校の同窓生も何人か来ていた。早見さんは東京理科大に入り、新左翼の運動に飛び込む。戦旗派だ。本部に泊まり込み、かなり激しい運動をやった。戦旗派を辞めた今、その当時のことを書いている。『I Love 過激派』(彩流社)などだ。そのことを両親に知られたくなかった。それで、早見慶子というペンネームにしたのだという。そんなこと急に言われても困る。2人で討論してる時も、「早見さん」とか、「八名さん」「八名見さん」とか呼んで、混乱した。まるで3人と話しているようだ。
でも、2人の出身から、どうして左右の運動に入ったか、今、運動のことをどう思うか。これからどうするへきか、などを話し合った。
この日の主催者であり、討論のコーディネーターは寺本泰之さん。驚いたことに豊橋市議なのだ。「いいんですか、左右両翼の人を呼んで講演会をして」と、こっちが心配した。「大丈夫ですよ」と言っていた。それに、もっと驚いたのは、寺本さんは、中卒なんだ。叩き上げの人だ。そして、どこの政党にも属してない。1人で闘っている。そんな人がいたんだ。驚いた。前日は、JR東労組の集会に駆け付けた鈴木宗男さんや、今野東さん、横山北斗さんなどの民主党議員も、勇気があると感動したが、この豊橋市議の寺本さんも偉い。勇気がある。
第2部のフリートークも活発な質問があった。「八名さんはぜひ帰ってきて、豊橋の市議になって下さい」という声も多かった。同級生も多いし、支援する人もいる。やったらいいだろう。「その前に、次の本を出して、それからです」と本人は言っていた。「自信作ですから」と言う。それでヒットを飛ばし、政治家はそれからだ。
民族派運動をやってる人も何人か来ていた。「鈴木さんの話には失望した。2時間、ムダにした」「あまりにもひどい」「天皇問題や靖国問題だけは絶対に妥協してはダメなのに」「ここまで落ちたとは」と厳しく批判・叱咤された。ありがたいご忠告だ。謹聴しました。
終わって、二次会。寺本さんは、早見さんの友人だから、きっと〈反戦・平和〉の左翼っぽい人かと思ったら、けっこう民族主義的な人だった。でも、寺本さんを支える人たちは、結構革新的な人がいる。政治的な意見は違っても、仲良くやっている。寺本さんの人間的魅力なんだろう。感動した。私ごときを呼んでもらい、ありがたかったです。これからもよろしくお願いします。
①10月31日(土)、日比谷公会堂に行きました。冤罪「JR浦和電車区事件」不当判決抗議集会です。鈴木宗男さんも連帯の挨拶をしてました。『日本の品格』のチラシを渡し、「札幌の出版社から来月、本を出すんです」と言ったら、「札幌で出版トークをやりましょう」と言ってました。実現したらいいですね。
⑤衆議院議員、横山北斗さんと。青森選出です。東北の人は皆、いい人ばかりだ。「北斗」は、いい名前だ。秘書の女性に聞いたら、「お父さんが『北斗の拳』のファンで、それで付けたんです」。でも、北斗さんが生まれたのはその前でじゃないの。何才?「46才です」。北斗さん本人に聞いたら、「46年前は漫画はまだ始まってません。北斗七星から付けたんです」。そういえば、宮城県出身の空手家・東孝さんの大道塾は、大会が「北斗旗」だ。東北の我々にとって北斗七星は、指針であり、希望の星なのだろう。そういえば、一水会を作る時、「北斗会」にしようかと思ったこともあった。
⑦日比谷公会堂の大会が終わり、5時から、有楽町で打ち上げ。私も挨拶しました。右は常石敬一さん(神奈川大学教授)。毒ガス問題では権威で、オウム事件の時は連日、テレビに出ていた。中学の時、奥浩平さんと同級生だったそうだ。あの『青春の墓標』の奥さんですよ。昭和18年生まれだ。驚いた。奥浩平、常石敬一、山口二矢、小森一孝(風流夢譚事件)は皆、昭和18年生まれか。元外務省の孫崎亨さんも。それに「よど号」グループの田宮高麿さんも。あっ、私もそうだった。うーん、凄い人たちばかりだな(私を除いて)。「昭和18年生まれは、とてつもない人間が集中してるんですよ」と常石さん。知らんかった。 調べて本を書こうか。『昭和18年生まれの爆発』とか。