去年は忙しかった。本を4冊出したし、対談集も1冊出た。地方にも随分と行った。でも頑張って本を読んだ。「月30冊」のノルマも達成した。いい本も読んでるし、感動的な本に出会って時間を忘れて読み耽ったこともある。これこそ「至福の瞬間」だ。そうか。この〈瞬間〉を味わうために人間は生きているのか。と思う。
又、昔の古い本も読んだ。30年前、40年前に読んだ本を今、読み返してみると、「全く新しい本」だ。全く、感じ方も違う。「おいおい、本当に昔、読んだのかよ。字面を追ってただけじゃないのか」と、もう1人の自分が訊ねている。
昔は、「全集」をよく読んだ。世界や日本の「思想全集」をいくつも読んだ。世界や日本の「文学全集」も読んだ。世界の思想的・文学的「山脈」に挑戦し、征服した。そして次の「山脈」に挑んだ。そんな気持ちだった。
多分、20代・30代で、主要な本は読破したと思った。錯覚だろうが、そう思った。だから、もう読むものがなくなった。と、その時点で、読書戦争を闘う気合が萎えたのだと思う。だから、あえて「月30冊」というノルマを自分に課して、「読書人生」を継続させているのだろう。と、自分を客観的に見ている。
ただ、今は、「ノルマ」に追われて、「読み易い」本を読んでいる。という欠点もある。「ノルマ式読書法」に内在する欠陥であり、危うさだ。月末になって、ノルマが達成できないと思うと、図書館で、新書を10冊位借りてきて、2日位で読破する。という荒業もやった。今なんて、初めから新書を沢山読んでいる。「新書でノルマの半分以上を達成し、あとは難しい本をゆっくり読むんだから」と本人は弁解するが、どうも易きに流れるような気がする。
そうか。新書を「1冊」と数えるからいけないのか。新書は3冊で「1冊」にする。あるいは、ノルマ30冊のうち、「新書枠」は5冊までとする。あとは何十冊読んでも「ノルマ」には入れない。ともかく、今、「ルール委員会」で審議している。近いうちに決定するだろう。
勝間和代さんは「新書は20分で読める」と豪語していた。いや、20分で読める新書もある。と言ってたのかな。ともかく、読み易い。アッという間に読めるのが多い。
それに比べ、ずっと内容のある漫画や、月刊誌、週刊誌などは、「1冊」と認められないし、ノルマに入らない。これはおかしいと不満の声が上がっている(本の間から)。小林よしのりさんの『天皇論』『戦争論』などは、新書本100冊以上の内容があるし、価値がある。それなのに漫画だからというので「1冊」に入らない。これは変だ。じゃ、小林さんの漫画だけは、「思想書」として認め、1冊にするか。(いや、これだけで「10冊」にカウントしてもいい)。ともかく、小林さんの漫画だけは、「思想書」としてカウントすべきだろう。「ルール審議会」に、これは強硬に申し入れておく。
そうだ。漫画で思想や文学を描いた文庫本も出ている。私も、ほとんど読んだ。ニーチェ、魯迅、漱石、芥川、太宰のものもある。世界で一番長い小説『失われた時間を求めて』も、ここで読んだ。でも、これは「1冊」に入らない。これに刺激されて、〈本物〉を読まなくてはいけん。その時、初めて〈1冊〉になる。
今日(1月12日)の産経新聞を読んで驚いた。鳩山首相が書店で本を探し、読み、何と28冊も買ったんだと。現金で5万287円を払ったという。1時間も書店にいたという。いいことだ。超多忙で、人と会う時も、「5分」とか「6分」ずつ会ってるのに、書店で1時間だよ。いいことだ。次は、「ルノアールで3時間読書」に挑戦してほしい。産経新聞によると…
〈鳩山由紀夫首相は11日昼、東京・丸の内の書店を訪れ、経済書や思想書など計28冊を購入した。総額5万287円をキャッシュで支払うと「まあ好きなところから読ませていただきます」と書店を後にしたが、18日の国会召集を控え、政治課題が山積みしており、「読書を楽しむ暇はあるのか」との声も〉
最後の「声」は余計だ。記者の感想かもしれないが。人と会う時間や、インタビューの時間をカットしてでも、本を読む時間はとるべきだ。それに国会議員の諸君もそうだ。テレビのバラエティに出て顔を売ろうと、さもしいことを考えるな。そんな時間があったら本を読め。
そうだ。鳩山首相が書店で本を探している写真を見た。アレッと思った。本の棚は特注だ。棚の下に引き出しがあって、そこに本を立てる。こんな工夫をしてるのは、あの書店しかない。それに首相が買った28冊の内訳が出ている。政治・思想・経済・漫画まである。普通の本屋なら、何階にも分けてある。こうしたものが1カ所に集まっているのは、あそこしかない。産経の写真説明には、こう書かれていた。
〈久々に書店を訪れた鳩山由紀夫首相。店員のアドバイスに熱心に耳を傾けながら1時間以上も本を物色して回った。
=11日正午ごろ。東京都千代田区〉
ここまで書いたら分かるだろう。この書店とは、きっと丸の内の丸善ですよ。それも4Fにある「松丸本舗」ですよ。このHPにも何度か紹介したが、松岡正剛さん(全共闘出身の編集工学者)がやっているものだ。写真を見ると、着物を着た美女が説明をしている。普通、着物の女性は書店員にいない。本を抱えて走り回るのに不便だ。
それに、この女性は私も知っている。松岡さんのスタッフだ。ということは、単に「時間があるから本屋に行ってみようかな」と思ったのではない。松岡さんのやっている「松丸本舗」の噂を聞いて、「ぜひ行ってみたい」と思って、行ったのだ。私の推理に間違いはないと思う。
それに、首相が購入した本には、こんな本が入っている。
内田樹『日本辺境論』、佐藤優『日本国家の神髄』、山本峯章・村上正邦・佐藤優『「情」の国家論』、渡辺京二『逝きし世の面影』、渡辺公三『闘うレヴィ・ストロース』などだ。いかにも松丸本舗でテーマ毎に並んでる本というかんじだ。又、安彦良和の漫画『虹色のトロツキー』もある。いいですね。
では次に、「青年の読書」と「老人の読書」についてだ。「老人」じゃ淋しいから、「中年」にしようか。私のことですよ。「青年」も「壮年」にしようか。劇団再生の高木尋士氏ですよ。
12月26日(土)、再生の忘年会に行ったら、高木氏が「今年はノルマを達成しました!」と言う。何冊読んだの?と聞いたら、「12万134ページです」という。凄い。「冊数」ではなく「頁数」のノルマを決めているのだ。
前に、高木氏と話していた。多分、ロフトでだ。「暇のある時、いい本を読もう」と思ってるだけでは本は読めない。「ノルマ」を決めるべきだ。私は「月に30冊」のノルマを課しているが、他にも、「ページ数によるノルマ」「高さによるノルマ」「重量によるノルマ」…とある。そんな話をした。「じゃ、僕はページ数によるノルマでやります。月に10000ページを読みます」と言う。いいのかよ、そんな悲壮な決意をして。と思ったが、ちゃんと、やってたのだ。
300ページの本なら月に33冊だ。それで1万ページだ。高木氏のノルマは「月に1万ページ。年間12万ページ」だ。結果は12万8134ページで、冊数によると393冊だという。大したものだ。偉い。
「あまり苦労せずに到達できた数字でした。一昨年の507冊が、大変だっただけに案外楽に感じたのかもしれません」と勝利者インタビューで謙虚に語っておりました。さらに、こんなことも語っておりました。
〈ページ数のカウントは意外に面倒でした。なので、今年は冊数にしようかなと思っています。重さで!と思いましたが、なかなかノルマ設定が難しいのです〉
そうですか。難しいですね。冊数にするか。ページ数にするか。高さにするか。重さにするか。他には、活字数もあるな。でも、1字1字、数えるんじゃ、もう一度、読むのと同じだ。意味ないか。
「月に自分の体重分を読むというのは、どうかな」と私は高木氏に言いました。全く根拠がなく、フッと思いつきで言ったのです。(この人は、いつも思いつきで、無責任なことを言うのです)。でも真面目な高木氏は、それを真剣に考え、計算してくれました。
〈平均的な文庫本は150gくらいです。平均的な単行本で450gくらい。新書1冊が、大体150gくらいです。近代日本思想大系は、700gくらい。
例えば、毎月自分の体重(58kg)とすると、文庫本なら386冊…。全集だと、月に80冊です。とても無理だと思います。
月に10kgなら。思想大系なんかを10冊、新書を10冊、単行本を5冊、文庫を10冊で大体10kg。なんとかなりそうなノルマですが、思想書10冊込みで月に35冊はきつい気もします。年間100kgとすればなんとかいけそうな気もしますが。
今のところ、やっぱり月に30冊以上、年間400冊を目標にしてみようかなと思っています〉
いちいち計ってくれたんだ。申し訳ない。じゃ、ノルマにするんなら、「月に10kg」だ。あるいは、「月に30冊」。もしくは、「月に1万ページ」。このあたりが妥当な数字だ。
高木氏が去年、292冊読んだ中で、印象に残ったのはどんな本かな、と思ったら、「こんな本ですよ」と、メールが来ました。電車の中で、メールを見ていて驚きました。凄いです。余りに驚いたので、降りるのを忘れて、乗り過ごしてしまいました。だつて、こんなんですよ。
「近代日本思想大系」の「大杉栄集」、「幸徳秋水集」、「世界の名著」の「マキャヴェリ」、「コーラン」、「諸子百家」、「ガンジー、ネルー」、「オウエン、サン・シモン、フーリエ」、「プルードン、バクーニン、クロポトキン」、埴谷雄高の『不合理ゆえに吾信ず』、『闇の中の黒い馬』
葦津珍彦『ロシア革命史話』
トロツキー『ロシア革命史』
高橋和巳『日本の悪霊』
サヴィンコフ『テロリスト群像』
『世界教養全集』12巻
「ゴッホの手紙」他 19巻
フレイザー『悪魔の弁護人』他 20巻
セリグマン『魔法—その歴史と正体』
この他、まだまだ続く。私も20代、30代にはこうした思想書を貪り読んだな、と思いました。でも今はダメですね。悔しいけど、こんな体力はない。「青年の読書」と「中年の読書」の差ですね。高木氏は脚本家ですから、今まで小説はかなり読み込んでいる。去年も、読み返したのが多いという。太宰治、安部公房、丸山健二、ドストエフスキー、見沢知廉…と。
実は、毎年1月には、前年に私の読んだ数と、月平均、それに何を読んだか。を報告していた。でも、「何を読んだか」はやめておこう。高木氏の本の前では、とても恥ずかしくて、挙げられないよ。
そうそう。「現代の読書人・高木氏」と、このHPで対談する約束をしてたんだ。「過去の読書人・私」が。でも、読書全般だと、かなわない。じゃ、高橋和巳『日本の悪霊』と、フレイザーの『悪魔の弁護人』。この2冊だけに限定して話をしようかな。とても刺激的な本だし、今でも印象に残っています。
では、恥ずかしながら、去年読んだ冊数です。とても公表できるものではありません。今まで何も読んでこなかったようなものです。「読書人」の私は、これから始まるのです。
1月 | 40冊 |
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2月 | 40冊 |
3月 | 46冊 |
4月 | 40冊 |
5月 | 35冊 |
6月 | 46冊 |
7月 | 40冊 |
8月 | 47冊 |
9月 | 34冊 |
10月 | 37冊 |
11月 | 33冊 |
12月 | 34冊 |
40冊以上読んだ「優良月」は7ヶ月もある。半年以上だ。合計で、472冊。それを12で割って、39.3冊。これが去年読んだ「月平均読破数」だ。
内容については恥ずかしいので、やめとこう。ただ、今年は、古い本をかなり読んだ。昔、お世話になった先生方の本だ。それは、内容のあるものだった。特に、「生長の家」谷口雅春先生の『生命の実相』全40巻と『明窓浄机』6巻を読んだ。学生時代に読んだのとは又、別な感動を味わった。それは又、別の機会にゆっくり書いてみよう。では、おわり。ことよろ!
⑦12月26日(土)、劇団再生の忘年会の時です。読書のし過ぎで目が痛いのか、サングラスをしている高木氏(右)。左から大浦信行さん、鈴木、設楽秀行さん。あっ、この写真は一度、載せたね。でも、いいでしょう。
⑧産経新聞(1月12日付)より。やっぱり丸善ですよね。左に鳩山首相が購入した28冊のリストが。佐藤優さんの本が2冊も入ってます。JR総連の新年会で佐藤優さんに会ったので、教えてあげました。「エッ? 本当ですか」と言ってました。ホントです。
⑨先週紹介した「1967年度 早大政経卒業アルバム」を見てました。後ろの方に「ゼミ」の紹介があり、私は「大西邦敏ゼミ」なので探したら、いなかった。私が欠席した時に写真を撮ったらしい。つまんねえな、と思って、さらにページをめくると「GROUP」というページが。フーンと見てたら、右端の人間に見覚えがある。他にも知ってる顔がいる。そしたら、後ろの列、右から3番目。ギョッとした。この凛々しい学生服の男。私じゃありませんか。間違いない。今回、見直して、初めて発見した。
⑬一体、何でしょうか、これは。「おい、クニオ、やろうよ!」と、生徒に無理矢理、させられました。顔が、嫌がってます。さらに写真まで撮られました。「私のブログに載せたから、クニオのブログにも載せろ」とメールが送られてきたのです。