2010/06/07 鈴木邦男

「平成随一の奇書」にして、危書!
=『空想 皇居美術館』の冒険=

①果たして大丈夫なのか?

『空想 皇居美術館』(朝日新聞出版)
『空想 皇居美術館』(朝日新聞出版)
 

よく出したもんだと思う。こんな怖い本を。勇気がある。と言うよりも、命知らずだ。私だって、ビビリましたよ。あのシンポジウムの時は。だって、「皇居に巨大な美術館をつくる」という。それを大真面目に、建築家やアーティストが論じる。「出席してくれ」と言われて喋ったが、落ち着かなかった。こんな〈危ない話〉をしていて大丈夫なのか。「不敬だ!」「許せん!」と襲われるかもしれない。「その時は私を盾にして逃げて下さい」と、強がりを言ったけど、生きた心地はしなかった。

 

でも、何とか無事に済んだ。それで「全て」は終わったと思った。ところが、その〈危ない話〉が本になった。さらに、「皇居美術館をつくったら、こんな美術品を持ってくる」「美術館は地上千メートルの巨大な建物になる」…と、論じている。新進気鋭の建築家やアーティストが全力で取り組み、提言する。ゲッと思った。

 

「アートだったら何でも出来る」「アート万能」「アート無罪」と思っているのだろう。でもなー、ちょっと甘いんじゃないか。楽天的に過ぎるんじゃないのか。と、私は心配だ。

 

5月10日(月)、出たばかりのその本をもらった。「発売は5月20日です。まだ見本誌です」と言うが、見た瞬間、背筋がゾゾーッと、寒くなった。いいのかよ、こんな本を出して。危ないな。と思った。だって、皇居の写真が表紙にドカーンと出ている。そこに「巨大な美術館」が立っている。何でも、地上1千メートルの巨大な美術館だ。私でさえ、怖くなった。本の帯にはこう書かれている。

仕掛け人の彦坂尚嘉さん(現代美術家」と
仕掛け人の彦坂尚嘉さん(現代美術家」と
〈これは本気の空想だ! 今世紀最大の提言! 平成随一の奇書!〉
 

自分で、「奇書!」だと言っているよ。なかなか、ない。「本気の空想」だと言っている。これは「予防線」なのか。バリアーを張っているのか。「これは天皇制を云々するものではありません。あくまで空想の話です。アートの話です」と。

 

でも「空想」だから、大丈夫とはいかない。1960年に『中央公論』に発表された深沢七郎の『風流夢譚』は、「空想」小説だった。夢の中の話だった。それでも、「許せない!」「不敬だ!」と言って、右翼に襲われた。『中央公論』には全国の右翼が押しかけ、攻撃した。それだけではない。17才の右翼少年が中央公論社の社長の家に抗議に行き、お手伝いさんを殺し、奥さんに重傷を負わせた。

 

50年前の事件だ。でも、この時の〈恐怖〉が、「言論の自由」を吹き飛ばした。「右翼は怖い」「右翼はテロだ」「右翼は無関係の女性をも殺す」…という恐怖となって、今も人々の記憶の中に残っている。深沢七郎は、右翼の襲撃から逃れて、全国を放浪した。又、それ以降、「天皇批判」はタブーになった。

②「夢」や「空想」だって襲われた

鎌倉の大仏を皇居美術館に持ってくる
鎌倉の大仏を皇居美術館に持ってくる

でもまだ、活字による天皇批判は少しは出来た。しかし、「空想」や、ビジュアルなものはもう出来なくなった。出したとしても、全て右翼の襲撃にあった。たとえば、写真をコラージュして天皇制を批判した、揶揄したものは、全て襲われた。大浦信行さんの作品や、東郷健さんの作品などだ。

 

「襲う右翼」にしても、理屈はある。

 

「天皇制を批判するなら、堂々と、論文を書いてやるべきだ。それで、我々と討論したらいい。ところが、写真のコラージュで、いかがわしいものを使ったりする。又、〈夢物語〉の形で、実名をあげて、揶揄する。これは、個人の場合なら、確実に名誉毀損になる。内閣総理大臣が訴えるべきなのにやらない。だから我々が抗議するのだ」そういう理屈だ。

 

「こんなものは、〈文学〉でも〈芸術〉でもない。ただの猥褻、不潔な「便所の落書き」だ。だから我々が、消してやるのだ!」と言う。その作品を「消す」。書いた人間までも「消す」のだ。そういう理屈になる。

 

深沢七郎の『風流夢譚』は、夢物語だ。夢の中で、革命が起きた。まァ、その程度ならいいかもしれんが、皇居前広場で、皇族の方々が、次々と首を切られる。それも実名をあげている。ギロチンで切られて、クビがスッテンコロリンと転げた…と書かれている。「たとえ、夢であっても許せない!」と右翼は激怒し中央公論社に押しかけた。そして、テロが起きた。

皇居の外側に皇居美術館を作る案もあった
皇居の外側に皇居美術館を作る案もあった
 

だから、「これは空想だから」「これは夢だから」といっても、防御壁にはならない。かえって、「不真面目だ」「揶揄している」「許せん!」となる。怒りに火を付ける。この本のシンポジウムの中でも、私はその点を言った。心配して言った。でも、単行本にした。大丈夫なのかな、と思う。

 

だからなのか、徹底して、「アート」であり、「空想」であることを強調する。くどいほど強調する。たとえば「新刊のご案内」にはこう書かれている。

〈アートであり、
 アートでしかなく、
 アートでしかなし得ない、
 提言〉
 

うまいキャッチコピーだ。苦心のあとが読み取れる。「アート」なんだから、「政治」の世界に引きずり下ろして攻撃しないでくれ! と言ってるようだ。「アートでしかない」のだし。それに対して、「政治」が文句を言ったら、大人げないだろう。そう言ってるようだ。

③これは、挑発する〈思想〉だ!

 
『彦坂尚嘉のエクリチュール』(三和書籍)
『彦坂尚嘉のエクリチュール』(三和書籍)

私が出たシンポジウムの時は、あくまで本気に、「皇居美術館」についての激論だった。ところが、単行本になると、『空想 皇居美術館』になっている。「空想」が付いた。気を遣っている。いろいろと配慮しているのだ。

 

「こんな危ない本を、よく朝日新聞社から出しましたね」と言う人がいる。私もそう思う。でも、実は、朝日新聞社が出したのではない。よく見てほしい。「朝日新聞出版」なのだ。朝日新聞社からは独立した。孤立した出版社だ。だからこそ出せた。と言う人もいる。

 

これは、あくまでも「アート」だ。「空想」だ。だったら、空想の土地に美術館をつくってもよかった。瀬戸内海に人工島をつくるとか、どっかの無人島につくるとか。普天間の基地跡につくるとか。でも、それでは、ただの空想になる。面白くない。と考えたのか、皇居につくろうとした。この辺の発想が、リアルというか、危ない。でも、「新刊のご案内」には、その辺のことを、こう書いている。

〈このたび、朝日新聞出版より『空想 皇居美術館』を刊行いたします。日本には大英博物館やルーブル美術館のような巨大美術館がない。だったら、それを広大な敷地をもつ皇居に作れないだろうか。展示する美術品は日本中の超一流作品を集める。法隆寺も鎌倉の大仏もみんな持ってきて展示してしまおう--。
 こんな奇想天外な「空想」をもとに、美術や建築の専門家、政治学者から右翼までが集まって、どんな美術館を作るか、“大真面目に”議論する前代未聞の美術・建築/思想書。〉
鈴木宗男さんと(5/28)
鈴木宗男さんと(5/28)
 

「思想書」だと言っている。凄い。単なる「空想」じゃないよ。それに、右翼までが、集まってとある。私のことらしい。「馬鹿野郎、こんなの右翼じゃねえぞ!」「左翼だよ! 売国奴だよ!」と言われそうだ。

 

さらに、こう書いてある。

〈CADによる皇居美術館の設計図、エスキース、完成イメージの3DCGから、収蔵予定作品のトレース画像も掲載。皇居という空間がはらむVOID(空虚)という問題や東京という都市のイメージをめぐる論考など、美術、建築、思想、政治をまたぐ一冊。空想からはじまり、その空想をめぐって本気で構想した、現代社会への提言〉
 

「空想でしかない」と言いながら、結構挑発してるし、挑戦的だ。又、もし、抗議、攻撃されたらどうする。という〈理論武装〉を、しっかりやっている。

 

私も、この本の中で、シンポジウムに参加したから、分かるが。世界の巨大な美術館というのは、元「王宮」だったところが多い。ロシアのエルミタージュも王宮だ。イギリスの大英博物館も。中国の故宮博物館もそうだ。だから、「皇居に」という「空想」も、ありうる。

でも、皇居に住んでる人々はどうするのか。「京都にお帰りになってもらいたい」と言う。ちょっと危ない提言だが、これは、右翼の中でも言ってる人がいる。少なからずいる。天皇の御所は、もともとは京都だ。いや、今も、京都だ。明治維新の時、「ちょっと江戸へ行ってくる」と言われて、天皇は行き、そのまま、京都に帰っていない。本来の御所の京都に戻ってきてほしい、と言う京都人は多い。

④徳川さんに政権を返したらいい

山口二郎さんと(5/28)
山口二郎さんと(5/28)
 

それに、皇居は、元々は江戸城だ。天守閣があり、石垣があり、お濠がある。闘う武将の居城ではあっても、本当の御所ではない。本当の御所にするなら、石垣を取り、お濠を埋め、城も取り払う。そうすると、京都の御所のような「東京御所」になるだろう。でも、そうはしなかった。だから、中途半端なものになり、呼び方も二転三転した。はじめは江戸城だ。そこに天皇が入ったので、皇城だといったり、宮城といったりした。あくまで「城」に入っている。これでは〈武士〉〈将軍〉のイメージがある。だから戦後は「城」をとって、「皇居」にした。

 

今でも、年取った人は、「宮城(きゅうじょう)」と呼ぶ人もいる。島倉千代子の歌でも、「あれが宮城よ」という歌詞がある。今は、宮城と言っても、若者は「宮城(みやぎ)」と読んでしまうだろう。

 

昔、「宮城(きゅうじょう)」と呼ばれていた頃、宮城(みやぎ)県の知事は、「間違えられては申し訳ない。わが県の名を変えましょう」と国におうかがいをたてた。「仙台県」にでもしようとした。でも、「それには及ばない」ということで、「宮城県」はそのまま残った。「宮城(きゅうじょう)」の方はなくなり、「皇居」になった。そして、天皇が京都に帰られたら、今度はそこが「皇居美術館」になる。

でも、天皇がいなければ、もう皇居ではない。だから、「江戸城美術館」でいいではないか。と私は主張した。1千メートルの天守閣をつくる。そこに日本の美術品を集める。何なら、何千人かをそこに住まわせる。刀とチョンマゲで、完全な〈武士〉をそこに住まわせる。いいじゃないか。「生きた江戸」を再現するんだ。

マスコミ市民フォーラム「どうした!民主党政権」(5/28)
マスコミ市民フォーラム「どうした!民主党政権」(5/28)
 

ついでに、政治も徳川家に返す。逆「大政奉還」だ。県も元の「藩」にする。どうせ小選挙区制の区割りなんて、昔の「藩」と同じだ(ほとんど同じだ)。だから、昔の殿様が再び藩主になればいい。政治の大枠は彼らがやり、その上で、最後に決めるのは国民だ。「国民投票」にしたらいい。これだけネットが普及してるのだから、一瞬で出来るだろう。

 

藩主がおり、将軍がおり、その上に天皇がいる。そういう「日本本来の姿」に戻したらいい。その上で、天皇にはもっともっと自由になってもらいたい。「でも、京都に帰られたら」というのは失礼ではないか、と言う人もいる。

その点は、シンポジウムの中で、原武史さん、御厨貴さんたちに詳しく聞いた。明治天皇は、帰りたいと思われた。大正天皇、昭和天皇になると、皇居が御所のように思われたのでは、と言っていた。さて、現在はどうだろう。「いや、ここがいい」と言われたら、勿論、そのままだ。その時は、京都に「京都御所美術館」をつくったらいい。

 

「京都に帰りたい」と思われたら、京都に帰られたらいい。そんなことを言うのは不敬だ、と言う人もいる。しかし、御所は1カ所で、不変なものではない。歴史上、何度も何度も「遷都」している。「東京のようなゴミゴミとした所はいやだ」と言われたら、京都に帰られたらいい。「もっと空気のいいところがいい」と言われたら、北海道でも沖縄でもいい。そこは、天皇も、もっと我が儘に言われたらいい。これだけ大変なお仕事をされているのだ。もっともっと自由気儘に言われたらいい。

⑤芸術憲法、アート立国を!

針生一郎さんの葬儀(5/31)
針生一郎さんの葬儀(5/31)
 

こう見てくると、「空想 皇居美術館」は決して「不敬」ではないし、単なる「遊び」でもない。硬直した「政治」を打ち破る「アート」の挑戦だろう。「政治」が勝つか、「アート」が勝つかの、死闘でもある。

 

又、「アート」であり「空想」でありながら、政治へ向かっての大胆な提言もある。たとえば、この巨大美術館を作ることによって、日本を「美術立国」にする。そして、「芸術憲法」を作る、という。これは驚きだし、大賛成だ。「平和憲法」などというただの〈受け身〉のものではなく、もっと積極的な価値を持った「芸術憲法」を作るというのだ。これは、この本の第3部「大シンポジウム・皇居×東京」で彦坂さんが主張している。

 

この大シンポジウムの参加者は以下の8人だ。これが、この本の目玉だ。

 

御厨貴(政治評論家)、原武史(歴史家)、鈴木邦男(右翼活動家)、暮沢剛巳(美術批評家)、南泰裕(建築家)、彦坂尚嘉(現代美術家)、五十嵐太郎(建築評論家)、新堀学(建築家)。

大浦信行さんと(5/31)
大浦信行さんと(5/31)
 

私は「右翼活動家」になっている。まあ、何だっていいや。そのうち、「皇居美術館建築家」になるかもしれない。あるいは「キュレーター」か。

 

この大シンポジウムは18ページから63ページまで、45ページもある。確か、去年、新宿でやったと思った。ところが本を見たら、2年前だった。

〈「リスボン建築トリエンナーレ2007日本帰国展」記念シンポジウム(協力・リビングデザインセンターOZONE、2007年11月25日)を大幅に再構成した〉
 

と書かれていた。2年半前か。あの時は、緊張した。こんな危ないシンポジウムをやっていいのか。と思った。襲撃されるんではないかと、ハラハラしながら参加した。何を言ったか、よく覚えてない。

でも、こんだけアートで武装されると、攻撃する方も、やりづらいのだろう。当日だって、皆、難しいことを言っていた。建築家やアーティストの話には私は付いて行けなかった。「不敬」だとか、「反日」だとか、簡単に決めつけられない。巨大美術館を作るなら、皇居しかない。そういって皇居にこれだけこだわり続ける彼らの方が、ずっと〈尊皇〉なのかもしれない。よく分からない。

荒木浩さん(中央」、宇賀神寿一さん(右)と(5/29)
荒木浩さん(中央」、宇賀神寿一さん(右)と(5/29)
 

ともかく、2年半前の「大シンポジウム」はエキサイティングだった。終わって、ホッとした。

ところが、それが、単行本になった。さらに世の中を挑発しているよ。怖い。いや、それだけではない。あの「大シンポジウム」を再度、やろうというのだ。これも怖い。6月19日(土)、7時からだ。千駄ヶ谷のビブリオティックでやるという。どこなのか全く分からない。襲撃され難い場所を選んだのか。でも、出席者の私だって行けない。ただ、あの時と、少々メンバーは入れ替わっている。案内状にはこうある。

〈「皇居美術館」の構想は、建築、美術、天皇制、政治…と、様々な角度からニッポンを考える。今世紀最大の提言です。
 今回のシンポジウムでは、右翼活動家の鈴木邦男さんや、「皇居ウォッチャー」の辛酸なめ子さん、雑誌『BRUTUS』で多くの美術特集を手がけてきた鈴木芳雄さん、建築家の倉方俊輔さんなど多彩なゲストを招いて、皇居美術館の可能性を徹底討論します!〉
 

「右翼活動家」がトップに出てきてますね。プレッシャーがかかりますね。その他、「仕掛け人」の3人(彦坂尚嘉、五十嵐太郎、新堀学)も勿論、出ます。さて、どんな激論になるのでしょう。楽しみです。いや、不安です。

【だいありー】
板坂剛さんと(5/25)
板坂剛さんと(5/25)
  1. 5月31日(月)羽田から対談会場へ。それから一旦家に帰って、着替えて、小田急線で生田に。春秋苑。針生一郎さん(美術評論家)のお通夜だ。84才だった。とてもお世話になった人だ。私は「平沢貞通の美術展」で何度かトークした。又、見沢知廉氏が『天皇ごっこ』で「新日本文学賞」を取った時の審査委員長だった。大勢の人が来てお焼香をしていた。今、見沢知廉氏の映画を撮っている大浦信行さんも来ていた。今、映画の編集作業を急いでいて、その「予告編」を8月の集会で上映すると言っていた。針生さんに出てもらった「日本心中」を以前、大浦さんが撮った。あれを又、上映し、シンポジウムをやりましょう、と私は言った。「ぜひ、やりたい」と言っていた。
     それと、大浦さんから聞いたのだが、針生さんは若い頃、日本浪漫派の運動をしていたという。保田輿重郎、影山正治といった人々と共に活動していた。その頃の話をじっくりと聞いてみたかった。残念だ。
  2. 6月1日(火)午前中、打ち合わせ。午後2時、編集プロダクション社長の椎野礼仁さんと会う。出版社を2軒、訊ねる。打ち合わせ。この人は、川本三郎さんとの対談集(朝日新書)を作ってくれた人だ。有能な仕事人だ。お世話になっている。夜、7時から市民運動の集まり。日弁連会長になった宇都宮健児さんにも会った。「おめでとうございます」と言った。元気一杯だった。改革に意欲満々だった。
佐藤優さんとトーク(ジュンク堂新宿店で6/2)
  1. 6月2日(水)午前中、原稿書き。
     午後2時、神楽坂の日本出版クラブに行く。『週刊読書人』で、上野昂志さんと対談。上野さんはジャナ専の校長先生だった。そこで私は非常勤講師をしていた。初めての「師弟対談」だ。楽しかったし、教えられた。
     午後6時、ジュンク堂新宿店へ。佐藤優さん(作家)との対談。『鈴木邦男の読書術』(彩流社)の出版記念トーク。
     「読書の達人」に私が一方的に聞き、教えてもらった。佐藤さんは速読術をマスターしている。読書の「忍術使い」でもある。でも、時間をかけて、じっくり読む本もあるという。「速読していい本」と「時間をかける本」を分けている。
     私が本で書いた「ノルマ」「テーマ別に読む」「どこでも読む」「併読する」「カードはとらない」などは、「同感だ。私もやっている」と言い、具体的に話してくれる。詰めかけた人も皆、メモを取っている。大学の講義を聞いているような感じだ。とても勉強になった。
     「劇団再生」の高木さん(全集について対談してもらった人)や、「週刊金曜日」の白井さん、赤岩さんなども来てくれた。
  2. 6月3日(木)午前11時、「週刊金曜日」の白井さん(勉強家)、赤岩さん(美人すぎる記者)と打ち合わせ。赤岩さんは昨夜のトークでも会った。「おっ!あれが噂の『美人すぎる記者』か」と昨日は、皆、言っていた。どこかのブログに書かれて以来、皆が注目している。彼女が一人いるだけで、場がパッと明るくなる。ただ、彼女に取材された人は、その美しさに見とれてしまい、何も喋れなくなる。だから、取材はいつもうまく行かない。美人なりにいろいろ悩みがあるようだ。
     午後3時、河合塾コスモ。現代文要約。5時、基礎教養ゼミ。今週は牧野先生の選んだ本を読む。服部修政著『知られざる御器所村=古墳・野仏の因縁』を読む。郷土研究所から出ている。珍しい本だ。よく、こういう貴重な本を見つけてくるものだと驚いた。面白かった。
     終わって、食事会は欠席して、ネイキッドロフトへ。「幸福の科学ナイトだぜよ!」を聞きに行く。景山民夫さん(作家)が生きていた頃、よく、「幸福の科学」の集まりには行ったし、本も随分と読んでいる。映画も全て見ている。だから、幹部の人たちにも知り合いが多い。この日行ったら、そんな人たちに会った。懐かしかった。途中で私も発言した。
     出席者は、饗庭直道さん(幸福実現党広報本部長代理)、渡邊伸幸(幸福の科学広報局長)、小林郁子(同課長)、里村英一(「ザ・リバティ」編集長)。
     里村さん、饗庭さんとは昔からの知り合いだ。景山さんや小川知子さんたちと一緒によく会ってたし、カラオケに行ったり、バーベキュー・パーティにも招待された。懐かしかった。この日は、「幸福の科学」側だけでなく、何と、有田芳生さん、山田直樹さん(ジャーナリスト)も来ていた。司会は藤倉善郎さん(フリーライター)。
     終わって皆と話した。又、この日は、元オウムで現「光の輪」副代表の広末晃敏さんも聞きに来ていた。懐かしい。「今年、本を出します」と言っていた。「鈴木さんの本を読んで、とても参考になりました」と言う。『愛国の昭和』『愛国と米国』『失敗の愛国心』が特によかったという。オウムが謀略論で「米軍に攻撃されている」と妄想を激しくして、テロに走ってゆく、集団狂気の様子が、日米戦争開戦前の日本と似てるという。今度、ゆっくり話をしてみたい。
     又、この日、映画「ザ・コーブ」の上映中止が3館になったと新聞に出ていた。「中止しろ!」と押しかけ、電話をするのも卑劣だが、映画館も弱すぎる。映画「靖国」の時と同じことになる。残念だ。悔しい。
トークが終わって…
トークが終わって…
  1. 6月4日(金)昼、新聞社の取材を受ける。それから原稿。鳩山首相が辞め、この日、菅直人さんが新首相になった。
     夜6時、赤坂のプリンスホテル。「ばばこういちさんをおくる会」。ばばさんにはとてもお世話になった。ばばさんが司会をするテレビ番組にも何度か出ている。決して激することもなく、いつも冷静に話す人だった。惜しい。
     それにしても最近、お葬式、偲ぶ会が多い。もう誰も、死なないでくれ、と言いたい。「おくる会」のあと、出席者と仕事の打ち合わせで、出かける。
  2. 6月5日(土)午前中、原稿。昨夜から寝ないで書いている。完全徹夜はしない。1時間でも2時間でも寝る。そして、次の日は、6時間は寝る。全く寝ないと、頭がボーッとして何も考えられないし、原稿なんて全く書けない。でも、佐藤優さんは毎日、3時間ほどしか寝ないという。それも中学の頃からだという。そんな事、出来るのかと驚いた。じゃ、普通の人の2倍から3倍、生きてることになる。今、50才として、本当は150才なのか!
     午後1時から、自治労会館。孫崎亨さん(政治評論家)の話を聞く。日米関係の話で、とても勉強になった。この人は、軍事・外交問題は詳しい。それに私と同じ年だ。私の『愛国と米国』を読んで、アメリカに対する〈反撥と共感〉は同じだ、と言っていた。同年代を生きてきたからだろう。
  3. 6月6日(日)午後1時より阿佐ヶ谷ロフトで、「北芝健さん(元刑事)のイベント。しかし、打ち合わせがあるので午前11時に来てくれ、とのこと。
     この日、集会を「襲撃する」という情報もあったので、その打ち合わせかもしれない。少々、リハーサルもやる。石原伸司さん(作家)、小峯隆生さん、「ムー」編集長など豪華なゲストだった。とても面白かったし、無事に終わって、ホッとした。
     北芝さんと私の対談本『右翼の掟・公安警察の真実』(日本文芸社)などもロフトで売った。担当者の金田一さんが、「立花さんが書評してました!」と『週刊文春』(6月10日号)を見せてくれる。「私の読書日記」で、この本を大きく取り上げてくれた。「これで、アマゾンの順位も一気に上がり、売れてます」と言っていた。じゃ、第2弾も出来るかもしれない。
【写真説明】
『空想 皇居美術館』(朝日新聞出版)

①これが問題の奇書、『空想 皇居美術館』(朝日新聞出版)です。カラーグラビアが多いので値段も高くなっており、2800円です。でも、それだけの価値があります。衝撃があります。

仕掛け人の彦坂尚嘉さん(現代美術家」と

②この本は、彦坂尚嘉(現代美術家)、五十嵐太郎(建築評論家)、新堀学(建築家)の3人による共編著です。この3人に、政治学者、作家、漫画家、右翼がからんで、壮大な奇書になっております。その仕掛け人の彦坂さんと。5月10日(月)、発行記念レセプションで。月島で。彦坂さんの後ろにあるのが、「皇居美術館」の模型です。

鎌倉の大仏を皇居美術館に持ってくる

③日本の国宝級の美術品を持って来ます。その写真の説明は…
〈鎌倉の大仏を、皇居美術館の中に収蔵します。それは仏教と神道を再び合体することです。明治維新後の「神仏分離令」や「廃仏毀釈」を否定し、再び神仏を統合して《美術立国》として再出発を計るのです〉(彦坂尚嘉)

皇居の外側に皇居美術館を作る案もあった

④皇居の外側に巨大な美術館を作る案もあった。本文より。
〈巨大なヴォイド(空虚)を形作る皇居美術館の全景。「触れえぬもの」を「力の場」として可視化する。大きな空虚と、人の営みを収める巨大なボリューム、そして拡張された壕の向こう岸に、場所に対しての思いを巡らせます〉(新堀学)

『彦坂尚嘉のエクリチュール』(三和書籍)

⑤彦坂さんの出した著書。『彦坂尚嘉のエクリチュール=日本現代美術家の思考=』(三和書籍)。頼まれて、帯の推薦文を書きました。
〈この奇才の前には日本も世界も余りに小さい。300年先を行っている。その高みから、この日本を壊し、造り直す。皇居美術館、アート立国、芸術憲法。こんなこと、誰も思いつかなかった。こんな男が日本にいたのだ。驚きだ〉

鈴木宗男さんと(5/28)

⑥鈴木宗男さんと。5月28日(金)、木村三浩氏と訪れ、ロシア情勢、北方領土返還などを話し合いました。

山口二郎さんと(5/28)

⑦山口二郎さん(北海道大学大学院教授)と。初対面ですが、『愛国者は信用できるか』(講談社現代新書)を初め、何冊も読んでると言ってました。ありがたいです。「やっと話し合いの出来る右派の思想家が出たか、と思いました」と言う。私なんて、とても思想家じゃないが。でも、嬉しかったです。私は、山口さんのことは気鋭の政治学者だと以前から注目していたので、会えて感激です。

マスコミ市民フォーラム「どうした!民主党政権」(5/28)

⑧山口二郎さんと武村正義さん(元「新党さきがけ」代表)の2人がトークをしました。「マスコミ市民」フォーラムで。「どうした!民主党政権」のテーマで。超満員でした。

針生一郎さんの葬儀(5/31)

⑨5月31日(月)小田急線生田の「春秋苑」で。午後6時から、針生一郎さんのお通夜があって参列しました。もっともっとお話を聞いておけば、と悔いています。残念です。

大浦信行さんと(5/31)

⑩お通夜で、大浦信行監督と会いました。「見沢知廉」の映画の編集作業を急いでいると言ってました。

荒木浩さん(中央」、宇賀神寿一さん(右)と(5/29)

⑪5月29日(土)、午後2時から文京区民センター。「東アジア反日武装戦線・さそり」の宇賀神寿一さん(右)、アレフ(元オウム)広報部長の荒木浩さん(中央)と。写真を撮ってたら、「おっ!日本の三悪人か!」と言われました。オウムと爆弾と右翼。だからでしょう。失礼な話です。真面目に、考え詰めたから、そうなったのです。それに3人とも、悔い改めて、今は「善人」三人組です。

板坂剛さんと(5/25)

⑫板坂剛さん(フラメンコダンサーにして作家)と雑誌で対談しました。雑誌のスタッフたちと共に。新宿3丁目のルノアール会議室で。

佐藤さんとトーク(ジュンク堂新宿店で6/2)

⑬6月2日(水)午後6時30分、ジュンク堂新宿店。『鈴木邦男の読書術』(彩流社)の出版記念トークです。佐藤優さん(作家)とのトークです。2ヶ月前に、ジュンク堂が「予告」を出したら、5分で満員になったそうです。佐藤さんの力です。当日券を求めて人も並び、超満員でした。実に充実したトークでした。私もとても勉強になりました。

トークが終わって…

⑭トークが終わって記念撮影です。お疲れさまでした。

【お知らせ】
  1. 6月9日(水)アカデミー賞映画「ザ・コーヴ」上映とシンポジウム。「反日映画」だ、として上映中止運動が起こっている問題の映画を上映し、シンポジ ウムを行います。荒れるでしょう。怖いです。18時20分開場。中野ゼロ小ホール。 参加費1000円。
     登壇者。森達也(映画監督)、綿井健陽(映像ジャーナリスト)、板野正人(カメラマン)、鈴木邦男。司会、篠田博之(「創」編集長)。
     なお、上映は6月26日から、「シアターN渋谷」「シネアート六本木」で上映の予定。これを皮切りに、全国各地の計26館で順次公開するという。配給会社アンプラグドが5月18日、発表した。でも、もう3館が中止を発表した。残念だ。見た上で、討論会を各地でやったらいいのに。「見るな!」「見せるな!」と、攻撃する人々は言う。偏狭だ。ひどい話だ。6月9日も、来るだろう。私は断固闘いますよ!
  2. 6月13日(日)午後1時、阿佐ヶ谷ロフト。中野ジロー氏(作家)の出版記念と激励の集いがあり、私もゲストで出ます。木村三浩氏、針谷大輔氏も出ます。
  3. 6月19日(土)7時『空想 皇居美術館』刊行記念シンポジウム。「皇居美術館」の構想は、建築、美術、天皇制、政治…と様々な角度からニッポンを考える、今世紀最大の提言です。
     これは凄い本ですし、革命的なアート本です。危ないです。どんな集会になるか分かりません。会場はビブリオティック(渋谷区千駄ケ谷)。パネラーは以下の人々です。辛酸なめ子(漫画家)、鈴木芳雄(元『BRUTUS』編集長)、倉方俊輔(建築史家)、彦坂尚嘉(現代美術家)、五十嵐太郎(建築評論家)、新堀学(建築家)、そして私です。
  4. 7月18日(日)午後から、大阪。「和歌山カレー事件」の林眞須美さん支援集会をやるそうです。私も行きます。
  5. 8月23日(月)「見沢知廉生誕企画」。「獄中12年。駆け抜けた46年」をやります。場所はBuader House(京王井の頭線 東松原駅より徒歩1分。料金2500円)。
     第1部 映画「見沢知廉 たった一人の革命」プレビュー上映。トークショー:大浦信行、高木尋士、あべあゆみ、鈴木邦男。さらに、新発見の資料展示。私が見沢氏にあてた手紙なども展示するそうです。恥ずかしいです。
  6. 11月6日(土)新潟県新発田市で、「三島由紀夫と蕗谷虹児=うたと講演のつどい」が行われます。蕗谷は新発田市出身の偉大な叙情画家で「花嫁人形」の作詞家でもあります。その2人について私が講演します。そして歌もあります。