「ニコ生、見ましたよ」と生徒に言われた。なんじゃい、「ニコナマ」って?「ニコタマ」なら知っちょるよ。二子玉川のことを「ニコタマ」って言うんだよ。吉祥寺は「ジョージ」で、自由が丘は「オカジュウ」だよ。高田馬場から早稲田大学まではスクールバスで170円だ。でも帰りは歩く人が多い。早稲田から高田馬場まで歩くことを「アリババ」と言うんだ。
最近、若者言葉を大量に覚えちゃった。iPadのおかげだ。iPadで本を読んでると、こんな最新の若者言葉がやたらと出てくる。でも、かなり前の「最新」かもしれない。だから、今の若い人とは話が繋がらないことがある。それで、「ニコタマ」だ。ちゃいまんねん。「ニコ生」だ。何でも、「ニコニコ生放送」のことらしい。ヘーッ、なーにそれ?って聞いたら、「6月21日(月)に出てたじゃないですか」と言われた。知らないな。「ニコニコ動画」には出たけど。「そのニコニコ動画の生放送がニコ生って言うんですよ」と教えられた。そうなのか。覚える言葉が一杯あって大変だ。
では、「ニコ生」(ニコニコ生放送)のことですね。いやー、驚きましたね。こんなことが出来るんですね。全く知りませんでした。「未知との遭遇」でした。昔、「テレビは、いつか双方向チャンネルになる」という予測を読んだことがありますが、これが「その双方向チャンネル」なんですね。そう思いましたよ、私は。
今のテレビは一方的に見るしかない。つまらなかったら、他のチャンネルを回すか、テレビを切るしかない。「つまんないぞ!」とテレビに言う「言論の自由」はない。その画面の中に自分が入っていく「参加の自由」もない。
でも、この「ニコ生」はあるんですよ。トークしてる人に対し、「つまんねえぞ!」「同じことばかり言うんじゃない」「この問題に答えろ」「逃げるな」と問いかけ、追いつめることも出来る。又、アンケートに答えて、自分たちの「賛否」を表すことも出来る。ヘエー、こんな時代になったのか。これがメディアの完成型かもしれない。メディアのユートピアなのか。
テレビでは、とても出来なかった。ずっと考えられた、未来型の「双方向チャンネル」も、ある問題に対し、「賛成ですか」「反対ですか」と聞き、視聴者が、(特別な機械の)ボタンを押して、イエスかノーかを押す。それだけだ。それだって、実現してない。
その点、ネットは凄いね。リアルタイムで、いんな意見がジャンジャン入ってくる。それが画面上に流れる。いやでも目に付く。でも、ゆっくり読んでたら、自分が喋れない。こりゃ凄いな。ヒャー、こんなことも出来るのか、と、ビックリの連続でしたよ。
出演したのは、「ザ・コーヴに関する討論会」でした。午後8時から10時半まで、2時間半だ。2チャンネルの創始者・ひろゆきさん。『この映画がすごい』の編集長・藤江ちはるさん。そして私の3人が出た。
実は、この日は、サプライズ・ゲストが来る予定だった。「ザ・コーヴ」上映に反対し、すでに3館の上映を中止させた「主権回復を目指す会」の西村さんだ。西村さんの参加を聞いたのは数日前だ。私はビビリましたよ。青くなりましたよ。あの雄弁で、何でも知っている西村氏だ。私なんて、すぐに論破される。でも、「恐いからやめます」とは言えない。緊張して、行きましたよ。
「ニコ生」のプロデューサーとは各条件で、いろいろ、やりとりがあったらしい。「この問題は喋らせろ」「この問題は中心にしろ」…と。私は「100%条件はのむ。だから出てほしい」と伝えてもらった。恐いけど、無理に強がってたわけですよ。映画館に行ってマイクで喋ってるだけでは勿体ない。もっと多くの人に伝えるべきだ。だから、「主権回復」の人にも、どんどん「言論の場」を提供したらいい。2時間半のうち、2時間20分を西村氏が話してもらい、あとの10分で我々3人が喋る。それでもいい。
どんな条件、どんなルールでもいいから、西村氏の話を聞きたい。そう言った。ところが、一旦は承知したのに、いろんな都合があったのだろう、出てもらえなかった。残念だった。と同時に、緊張の糸がプッツンと切れちゃいました。雄弁、博識な西村氏には私は徹底的に論破され、グウの音も出なくなるだろう。そう思って、真っ青になって「ニコ生」の会場に行ったのに…。「つぶすのは、もう少し待ってやるか」という西村氏の温情なのでしょう。命拾いしました。ありがとうございました。
「今からでも遅くないから、途中からでも、ぜひとも来て下さい」と私は呼びかけましたが、内心は恐かったんです。体が小刻みに震えていることが分かったでしょう。臆病なんですよ、私は。
さて、番組が始まって、驚きの連続でしたね。3人でやる予定なんですが、司会のひろゆきさんが来てない。「じゃ、彼が来るまで」と通称「メガネさん」が司会をする。その場で急遽、決まった。「えっ、大丈夫ですか?」と出演者の私が心配してしまった。ひろゆきさんが来たのは番組が始まって1時間半も経ってから。「すみません。寝てたもんで…」。普通、テレビなら、こんなことありえないよ。即、クビだよ。「でも、ひろゆきさんはいつもの事だから」「あれが普通だから」で通用する。皆、認めている。大らかだ。アナーキーだ。
「今まで寝てて、見てなかったんでしょう。今までの流れが分からなくて司会出来るんですか」と又もや私は心配しちゃった。そんなやりとりも全て出ているだろう。「いや、大丈夫ですよ」と言ってる。実際、すぐに流れをつかみ、ちゃんと司会をする。凄いねー。画面には、「さっきまで寝てたとは思えねえぞ。さえてる、ひろゆき」という書き込みがある。うん、そうだよな。「寝てた」と嘘をついて、本当は、しっかり見ていて、作戦を考えてたんじゃないのか。全く、何があるか分からない。
私に対しては、「頭悪い」「もうお前の本は買わないぞ」「勉強不足」…という書き込みがあった。そして、一番多かったのは「鈴木邦男は北朝鮮に帰れ!」。はいはい。帰りたいですね。6月11日から15日まで、本当に帰る予定だったのに、「入国拒否」されたんですよ。「ゴミはゴミ箱へ」という書き込みはあったのかな。あれは気に入ってます。今度、出る時は、あれをメインにジャンジャンと、カキコして下さい。
それと、「ゴキブリ!」もいいですね。気に入ってます。「ある朝、目を覚ましたら、ゴキブリになっていた」んですね。知りませんでした。カフカの『変身』ですね。わたしはもう、〈世界文学〉ですよ。学校に行ったら、生徒が「私も、『がんばれ!』と書き込みしました」と言ってた。ありがたいです。「もう一つしました。『元右翼!』と書いてた人がいたので、『今も右翼です!』と書き込みしました。
ハイハイ、ありがとうございます。ごていねいに。「『ロリコンって本当ですか?』という書き込みもありましたよ」という。「私じゃないですよ」と言ってた。そんなのあったの、知らんよ。まァ、「言論の自由」だから何を書いても自由だ。ただ、もの凄い分量のカキコが流れる。サバの大群が流れているようだ。それをクジラが追っている。いないか。
しかし、中には、批判のカキコでカーッとなる人もいるそうだ。「もう出るもんか!」と怒る人もいるそうだ。そうか、女性を呼んでおいて、「ブス!」とか、「整形ミス!」とか言われたら傷つくだろうな。そう思って聞いたら、そうした差別用語はフィルターにかけてるそうだ。でも、うまくすり抜ける人もいる。フーン。大変だな。
それと、「これだけは言われると傷つくからやめてくれ」というのはブロック出来るそうだ。年を若くごまかしてるのに、「本当は70才だ」なんてバラされたら嫌だ。そういう人にはNGコードをつけるんだそうだ。じゃ、「こういう言葉は優先的、集中的に言ってほしい!」というのもいいのかな。「逆フィルター」だ。
私の場合は3つですね。「ゴキブリ!」「ゴミはゴミ箱へ!」「鈴木邦男は北朝鮮へ帰れ!」この3つだけで画面に溢れる。いいですね。
そうだ。「ニコ生」が始まって、始めの20分、「ザ・コーヴ」の短縮版が放送された。数日前には先着予約2000人だけに、全部見せたそうだ。もの凄い申し込みだったという。でも、「ニコ生」では20分だけだ。
この20分の映画の間も書き込みはバンバン入る。それも、5段位にわたって、いろんなことが書き込まれ、信じられないスピードで流れていく。一番下には「映画の字幕」がある。書き込みを見てると、字幕を読めない。字幕を読んでると、書き込みは読めない。又、普通、映画が終わってから、ゆっくり感想も書こうと思う。ところが、見てる時、リアルタイムでコメントが入る。「これはウソだ」「盗撮してるし許せん」「ドロボーと同じだ」…と。それに、これはあらかじめ準備していたものを、ポンと入れてるんじゃないのかな。
さらに一番、驚いたのは、「アンケート」だ。「じゃ、見てる人にアンケートをとりたいと思います」と言えば、すぐ出来る。
たとえば、「この映画を見せた方がいいと思いますか」「見せない方がいいと思いますか」と司会が聞く。本当に一瞬に分かる。70%以上が、「見せるべき」。残りが「反対」「どっちとも言えない」だ。これは正直だし、正確だ。カキコと違って、1人でいくつも、という訳にはいかない。
さらに驚いたのは、「イルカを食べてみたい」と思う人はいますか、と突然、司会が言う。そんな。いるわきゃないだろうと思ったが、何と「食べてみたい」が30%以上あった。40%近い。そんな馬鹿なと思った。この映画は「イルカ漁反対」だし、「イルカを殺すな!」という映画だ。それなのにイルカを食べたいと思うのか。
よく考えたら分かった。今まで、イルカ漁が行われていると知らないのだ。大部分の日本人は。ましてや、イルカ肉が堂々と合法的に売られていることも知らない。この映画で初めて知った。「そうか、食べられるのか」「じゃ、試しに食べてみたい」とアンケートに答えたのだ。
この数字を見たら、オバリーさんも驚き、怒るだろう。でも、ドキュメンタリー映画というの諸刃の剣だ。逆効果だってある。そこが怖い。
上映に反対する人も、これを見たら、「おっ、上映させた方がいいかな」と思ったはずだ。違いますかね。
昔、戦争中の映画で、七五三で軍服を着ている子供が映ってた。こんな小さな子供でも、必勝の信念に燃えてます、と。勇敢な写真だし、国民を鼓舞するものだ。でも今となったら、「何だ、こんな小さな子供にも軍服着せて。児童虐待だ」と言われるだろう。子供の顔にモザイクをかけるかもしれない。
1つの主義主張、思想を訴える映画は、立場が違えば、又、時代が違えば、全く反対に見える。その意味でも、この「ザ・コーヴ」は多くの論争すべき点を含んでいる。イルカ肉について、イルカ漁について、文化、伝統について。ドキュメンタリーの撮り方について…etc。
それらの一つ一つが大きな争点になるだろう。それを見せないで、つぶすのでは余りに勿体ない。
それと、アンケートを見て思ったが、いつか選挙もこんな風になるのだろうか。国民一人一人がパソコンを持ってるんだし、投票場に行かなくても、一瞬で投票出来る。そして一瞬にして、総計が出来、当否が分かる。きっとテレビ局は反対するだろうな。今まで長々と何時間も「開票速報」をやってきて、視聴率を稼いできたんだ。そのドル箱番組がなくなってしまう。…いろんなことを考えた。
⑨このあと、「居酒屋花子」で二次会でした。巨大な居酒屋でした。会場のお寺に「居酒屋花子」のマイクロバスが迎えに来てました。酒飲み運転防止のために、お店に来る人、帰る人はマイクロバスが送迎するんです。料理もおいしかったです。タコが一匹、丸々出てました。「不殺生」で、誰も食べませんでした。
⑩ここのメニューは普通の紙です。でもタッチペンで、料理の番号をなでると、それで注文されるのです。東京よりも進んでいます。「未知との遭遇」です。タコの格好をした火星人にも会えたし。(本当のタコだったかな)。
⑬江本孟紀さんの事務所開きで。左は平井隆さん。私が1970年に産経新聞販売局開発センターに入社した時の上司です。「私も産経スポーツに30年、コラムを書いてました」と江本さん。「じゃ、我々は3人とも、フジ・サンケイグループだ!」となりました。