感謝、感謝です。ありがとうございました。果たしてどうなることか、とハラハラしておりました。ゲストも、お客さんも誰も来ないかもしれない。不安でした。8月2日(月)の阿佐ヶ谷ロフトです。「鈴木邦男生誕100年記念トークバトル」と銘打ってます。
「何だこれは!こんな冗談に付き合っていられるか!」とゲストは来てくれないだろう。お客さんだって来ないだろう。「誕生日なんか自分1人で勝手にやれよ」「大事なライブ会場を私用で使うなよ!」と言われるでしょう。「行ってやる」と、ついハズミで返事したゲストも当日はハッと我に返り、「馬鹿らしい。やめておこう」となるんじゃないか。…と、心配し、不安でした。
ところが、ところが。豪華なゲストが集まってくれました。そして阿佐ヶ谷ロフトは満員。「ロフト始まって以来の豪華ゲストだった」「面白かった」と反響もよかったです。全体を三部構成にして、総合司会を白井、赤岩さんが担当。この2人が全体の流れをリードしてくれました。おかげで楽しい会になりました。
「瓢箪から駒」って、こんなことを言うんでしょう。初めは「冗談」だったのに。少なくとも私はそう思いました。だって、「阿佐ヶ谷ロフトで誕生会をやりたい」なんて白井基夫さんが言う。ロフトを、そんな私的なことに使っちゃマズイだろう。「じゃ俺もやりたい」「私もやる」となったら、一年中、「誕生会」だらけになる。(でも、これも面白いかな。来年1年は全部、誕生会にします。とか)。
「お誕生日おめでとう」と言われて喜んでいるのは、中学生までだ。それなのに、いい年をして、「お誕生会」をやろうという。恥ずかしい。「やめてくれよ」と言いましたが、「じゃ生前葬をやる」と言う。脅されました。「究極の選択」です。「生前葬をやる位なら、本当に死んだ方がいい」と思いました。「生か死か」です。「誕生会」か、しからずんば「生前葬」です。仕方なく、「誕生会」を選びました。あとは白井さんに任せました。多分、60代でしょうが、ヤケで四捨五入して、「生誕100年」にしました。
それからが凄いんですね。白井さんや阿佐ヶ谷ロフトの店長さんなどで手分けして、私の知り合いの作家、映画監督などに次々と電話をかける。「おっ、それは面白い。行ってやるよ」と皆、言ってくれたんですね。皆、優しいですね。ユーモアの分かる人々ですね。なんせ、15人以上のゲストが次々と決まったんです。
「じゃ、舞台に並ぶのはやめて、フロアーで全員で円陣を組み、“大座談会”をやろう」という案もありましたが、「それではメリハリが効かない。三部構成にして、次々と出てもらおう」という案が通ったようです。当日、急用で来れなかった人もおりますが、でも、こんな豪華で面白いバトルトークになりました。
全体を3部に分け、休憩をはさんでやりました。午後7時から10時までだから、ワンステージでは50分ほど。初めに元演歌歌手の宮崎美乃利さんがオープニングの歌をうたってくれました。「出船恋歌」でした。100歳からの「出船」を祝うのにふさわしい歌でした。
第1部は、テーマが「なぜ、映画をつくるのか。モノをつくるのか」。若松孝二(映画監督)、伏見憲明(作家)、高木尋士(劇団再生)、椎野礼仁(編集プロダクション社長)。そして私が加わって、話しました。
まず、若松監督の映画「キャタピラー」の予告編が流される。もの凄い迫力だ。皆、息をのむ。8月14日(土)、全国劇場で公開だ。ただし、6月19日から沖縄では上映されてる。連日、驚異的な入場者数だ。そして8月6日、広島。8月9日に長崎で公開される。最後は東京。「8・15に向けて…」だ。こんな上映のやり方も初めてだ。
映画館では、『若松孝二 キャタピラー』(遊学社)も発売され、飛ぶように売れている。千円だが、実に充実した内容だ。「若松孝二は叫び続けている…。忘れるな。これが戦争だ」と帯には書かれている。半藤一利さんの詳しい解説。田原総一朗、鳥越俊太郎、おすぎ…らの原稿。そして私も書いている。若松監督や、寺島しのぶさんらの特別インタビューも収録されている。書店販売はまだだが、この日は、監督のサイン入りで販売され、アッという間に売り切れた。
映画「キャタピラー」の話から始まり、若松監督は、次は、「山口二矢、三島由紀夫などを撮りたい」という。そうだ。伏見憲明さんは、ロフトや新宿のゲイバーで、私は対談した。「三島とゲイ」「右翼運動とゲイ」といった危ないテーマで話をした。高木さんは、ずっと見沢知廉(作家)にこだわって芝居をやってきた。8月23日にも、見沢がらみの企画をやる。「見沢は三島を生涯、意識した作家でした」という。獄中で猛勉強し、作家を目指す。「新潮文庫で並んだ時、三島の直前にくるように」と、ペンネームは「見沢知廉」にする。さらに、その「夢」を実現させるためだから凄い。新潮文庫には『天皇ごっこ』を初め、4冊が入っている。
椎野礼仁さんは、2年前、私の本を作ってくれた。川本三郎さんとの対談『本と映画と「70年」を語ろう』(朝日新書)だ。天皇制やテロや三島や、映画、又、お互いが巻き込まれた「政治的事件」についても語っている。
とてもいい本になったと思っている。それを作ってくれた人だ。そして、今、もう1冊の本を作っている。三島事件から40年の今年だからこその思いを込めて、無双舎から出す。『遺魂(ゆいこん)=三島由紀夫と野村秋介の軌跡』だ。324ページの大著だ。10月上旬に発売の予定だ。今、必死で校正をしている。実は、7月31日(土)に福岡に行った。往復、新幹線で行ったのも、この本の校正のためだ。10時間以上、必死で校正していた。ロフトに無双舎の人も見に来てくれていた。
さて、「誕生会」の第2部だ。「追う側の論理と追われるものの論理」。テーマのつけ方もうまい。白井さんのセンスだ。元刑事の北芝健。この人は唯一の「追う側」だ。追われる側は4人。元赤軍派議長の塩見孝也。元赤軍派で「M作戦」(銀行強盗)を闘い、指名手配になりながらも15年の「時効」まで逃げ切った金廣志さん。学生時代は極左活動家で防衛庁突入などを行い、今も暴れまくっている「人間兇器」の高須基仁。そして、あの「パリ人肉事件」で世界中をアッと言わせた佐川一政。凄すぎるメンバーだ。こんな凄い人々を見れただけでも幸せだ、と、お客さんも大喜びでした。佐川さんと塩見さんが並び、「どっちが過激だったか」を競い合うのも凄い。
金さんは「銀行強盗」の時の面白いエピソードを話してくれる。包丁一本で、強盗に成功する。金庫には、大きな袋と小さな袋があった。とっさに「大きな袋」を持って逃げた。ところが、それは硬貨ばかり。重いし、大して入っていない。小さい袋の方は1万円札だった。「失敗でした。『舌切り雀』の教訓は本当でした」と言っていた。「大きな葛籠」を持って行った悪いおじいさんは、開いてみたら、ゴミやおばけばっかり出て来た。という話ですね。「おとぎ話」は生きてるんです。
又、赤軍派兵士として、獄中の「塩見議長奪還」を計った話。なぜ、やめたかの話。15年間、どう逃げたかの話など、興味が尽きなかった。佐川さんの「パリ人肉事件」の話は何度聞いても衝撃的だ。こんな「大物」たちが、よく来てくれた。そして、仲良く一緒に並んでいるのが不思議だ。高須さんがいつキレて、暴れ出すかと、ヒヤヒヤしていた。緊張感のあるトークでしたよ。
北芝さんも、こうした「犯人」「悪人」たちをいかにして追いつめ、捕まえるかの苦心談を披露していた。なかなか、聞けない。北芝さんは、公安もやった。私にとっては「不倶戴天の敵」だ。でも、この人は、「公安の論理」をキチンと語ってくれる。そして、公の場で論争してくれる。元公安では唯一人の貴重な存在だ。
それに、私は『公安警察の手口』(ちくま新書)を書いてから、多くの人から電話、手紙が来る。「私は公安に尾行されてる」という悩みだ。中には病的な人や、思い込みもある。それを聞くのだから大変だ。どうしても困ると北芝氏に回す。携帯を教えてやる。その人達に、キチンと北芝氏は対応し、喫茶店で会って相談を聞いてくれる。こんなこと普通なら、絶対にしない。ありがたい。だから私は頭が上がらない。
第2部も40分位しかなかった。もっともっと聞きたかった。北芝さんと「犯人」1人、1人との「尋問トーク」も面白いだろう。白井さん、企画してみて下さいよ。
第3部は、テーマが、「鈴木邦男の思想と行動を問いただす」。ゲストは6人。ライターの昼間たかし。菅原秀、中川右介、中川文人、映画監督の増田俊樹、ロフト席亭の平野悠さんだ。中川右介、文人氏は兄弟だ。革命家の兄弟だ。右介さんは、最近、クラシックや歌舞伎をテーマに新書を書きまくり、売れまくっている。でも元は、「IPC」という小さな出版社の社長だった。そう、私の『脱右翼宣言』『平成元年のペレストロイカ』『天皇制の論じ方』を作ってくれた人だ。『脱右翼宣言』は、これを読んで、ツルシさんが「週刊SPA!」に「鈴木を連載させよう」と決めてくれた。だから、「運命の本」だ。その後の話を聞いた。
「中川兄弟」だが「中川家」と言わないでほしいと中川文人氏は言う。「旧型中川」と「新型中川」と呼んでほしいという。それじゃ、と皆、「旧型ウイルス」「新型ウイルス」と呼びましたよ。文人氏は、「鈴木さんは昔はやけに過激で暴力的だったのに、何故変わったのか。転機は何か?」と鋭く問いただす。
増田監督は最新作の映画を一部、上映し、刑事役で出演した私の話をする。「マジになって、犯人役を本当に殴っていた!」と。だから、「ゴメン!」と謝ったじゃないか。本当は、「追われる側」じゃなくて、「追う側」の仕事につきたかったんだ!私も。まあ、映画の中でその夢は実現出来たから嬉しかったけど。この映画の脚本を書いたのは昼間たかしさんだ。いろんな取材でもお世話になっている。
次は、テロリスト役で映画に出してほしい。散弾銃を持って新聞社を襲って、撃ちまくるとか。マズイな。現実の事件と重なっちゃうよ。
菅原秀さんはロフト初デビュー。フリーライターで、いろんな本を出してるが、実は、高校の後輩だ。5年下だ。私は東北学院榴ヶ岡校の1期生だ。暴力的・威圧的な教師に怒って、私は職員室に殴り込み、その教師を殴って、それで退学だ。
でも、その事件があったから、その教師は、さらに狂暴になり、ずっと、生徒を殴りつけた。5年後の菅原氏の時代もそうだ。キリストの処女懐胎について質問した生徒に対して、キレて、イスで殴り、血だらけにした。怪我をした生徒はそのまま、学校を辞めた。その数年前には、修学旅行で生徒ともめて殴りつけ、大量退学者を出した。
「すみません」と菅原氏に謝った。「一身を犠牲にして、私が1人で成敗した」と思ったのに。ところが狂暴な教師にさらに火を付けてしまった。学院高弾圧の流血の歴史は全て私のせいです、と謝罪した。
平野さんは、ロフトの歴史について語る。「週刊SPA!」と共にロフトは過激に歩んできたと思ったが、対立・喧嘩もあったようだ。訴訟になったこともあるそうな。
「連合赤軍の植垣さんとストリッパーの話を書いて、ロフトで鈴木さんが糾弾されたこともありましたね」と平野さん。そうだよね。面白い記事だと思ったけど、連赤関係者に査問され、糾弾された。「あっ、連合赤軍の総括って、こんな感じだったのか」と。私は「追体験」しましたね。
又、アホな左翼指導者が「俺は狙われている」と妄想にかられ、警察をロフトに呼んだこともあった。又、乱闘、流血…と、凄い騒ぎもあった。そんなロフトの歴史を語ってくれました。先々週書いたけど、日本にロフトがあってよかったと思う。右翼向けの映画「靖国」上映、元オウム幹部と会えたこと。塩見、植垣さんらとトークできたこと…など。数え上げたら切りがない。ロフトで私は育ててもらったようなものですよ。
今回だって、ロフトがあったので、こんな「生誕100年記念」という奇想天外な催しをやらせてもらった。感謝、感激です。
最後に、お花をもらいました。お誕生ケーキももらい、100本のローソクを吹き消しました。時間がかかりました。そして、終わってからも、残ってくれる人がいて、12時頃まで、若松監督を中心に、お喋りをしました。本当にありがとうございました。
今年は、いろんなことがあり、イルカ騒ぎや、北朝鮮行き(予定)や、デンジャラスな夏で、とても8月2日は迎えられんだろうと思ってましたが、おかげさまで、こうして大パーティを開いて頂きました。ありがたいです。やはり長生きはするもんです。
日本は私のような100才以上の人が4万399人もいるそうです。でも家に帰って新聞を見たら、「不明100歳超」が拡大してるそうです。生きてるはずなのにいない。生きていることにして年金を誰かがもらってるのか。これじゃ、100才以上は4万399人というけど、本当は399人だけじゃないのか。私の近くでも、60代のくせに、「100才だ」と自称してる人もいますし。うーん。ミステリアスな日本ですね。
⑧7月30日(金)、午後7時、横浜メディアビジネスセンターに行く。「ヨコクリ」の集会。横浜のクリエーターが集まる勉強会らしいです。イルカについての詳しい話をするというので聞きに行きました。
左から、渡部健司さん、和田昌樹さん、坂野正人さん。坂野さんは3度目。中野区ZEROホールとオリンピック青少年記念センターでイルカの話を聞いた。あとの2人は初対面。
と思ったら和田さんが「久しぶり」。エッ?「1969年に、神楽坂にあったベ平連事務所に殴り込んで来たじゃないですか」。エッ、そんな乱暴なことをしたんですかね。全く記憶にありません。でも昔なら、やったでしょう。きっと。すみませんでした。
⑨7月31日(土)、福岡市のKBCシネマで「ザ・コーヴ」の上映があり、その後、私が話しました。第1列目は空けてあります(襲撃されないように)。
ガードマンもいました。外には警察官が10人以上いました。ピリピリした状況で始まりましたが、無事に終わりました。8月8日(日)に聞きましたが、松林要樹監督のお父さんも来てくれたそうです。ありがとうございました。
⑪映画館での講演が終わり、西南学院に移って、田村先生のゼミ生に話しました。(写してませんが、手前の方に学生がいます)。
「ことばの力養成講座。日本の言論」のテーマで話しました。上野昂志さんと私の対談「全集を読む」が載った「週刊読書人」がテキストとして配られていました。ありがたかったです。私の本を読んでる学生も多く、嬉しかったです。終わって、近くの居酒屋「じゃがいも」で飲みました。
⑫翌、8月1日(日)、外山恒一氏に会いました。彼の「革命家養成塾」に行って話しました。若い塾生が6人ほどいました。勉強し、運動し、偉いと思いました。私の左が外山氏。「写真はマズイ」とのことで、塾生は次の部屋に…。
⑬「レコンキスタ」(一水会機関紙。8月号)。8月11日〜15日、フランスのルペンさんを初め、「欧州右翼議員団」が大挙来日し、「世界平和をもたらす愛国者の集い」が開かれます。「愛国者インター」を目指しています。私も参加します。一水会主催です。