石平(せき・へい)さんは中国人の評論家で、現在、拓殖大学客員教授だ。今回の尖閣諸島沖衝突事件ではテレビ、新聞によく出ている。「日本は譲歩するな!」「中国依存の体質を改めよ!」と強く主張している。10月4日(月)、一水会フォーラムはこの石平さんを講師に迎えて行われた。
会場は超満員だった。この「日中衝突」の本質は何か。中国とどう対応すべきか。皆、考えているのだ。だからこそ今、石さんの話を聞きたいと思った。実にタイムリーだ。
でも、この尖閣問題が起こってから、石さんに講演を頼んだわけではない。そのずっと前から石さんの講演は決まっていた。それは一水会のHPや私のHPを見てもらったら分かる。中国問題には詳しい石平さんに、中国の歴史や日中関係の今後を話してもらおうと思っていた。
ところが、尖閣諸島沖衝突事件だ。急に石さんも忙しくなった。1分1秒も大切だ。だからといって一水会フォーラムをキャンセルしない。それは石さんの義理堅いところだ。そして二次会まで付き合ってくれた。
「超多忙なのによく来てくれましたね。謝謝(シェイシェイ)」と挨拶した。「約束は守ります。私は日本人ですから」と言う。石平さんは、実は2007年(平成19年)、日本国籍を取得した。れっきとした日本人だ。
でも、今回の衝突事件の前に石さんに講演依頼をしたなんて、まるで事件を予知していたようだ。予言者だ。石さんが、あるいは依頼した一水会の木村三浩代表が。
石平さんは、1962年(昭和37年)、中国・四川省生まれだ。今年、48才。童顔だから若く見える。でも言うことは鋭い。中国のこともズバズバと批判する。北京大学哲学部卒。昭和63年に来日し、神戸大学大学院文化学研究科博士課程修了。民間研究機関を経て、評論活動に入る。文化大革命に反対し、民主化運動にも関わった。その過程で中国に絶望し、日本に帰化した。
かつての祖国・中国へも舌鋒鋭く批判する。「何もここまで言わなくても…」と、気の弱い私などは思う。しかし、石さんの言うことには真理があるし、予言性がある。
映画「靖国」についても、石さんの話を聞いて、「あっ、そうか」と思った。あるパーティで会った時、石さんに聞いたのだ。「あれはいつでしたか」と聞いたら、「『月刊日本』の出版パーティの時でした」と、はっきり覚えている。
映画「靖国」は自民党の議員や保守派の人々、雑誌、そして右翼から猛攻撃を受けた映画だ。「反日映画だ!」と右翼の街宣車も押しかけ、映画館は続々と「上映中止」した。監督の李さんは中国人だし、中国が後押しして「反日映画」を作ったのだ。と言われた。日本の右翼の中には「これは、むしろ愛日映画だ」と発言し、皆に糾弾された人もいた。
じゃ、中国では、この映画は大喝采、大拍手で迎えられて全土で熱狂的に上映されたのだろう。そう思って、李監督に聞いた。答えを聞いて驚いた。「実は、中国では上映中止なんです」と言う。バカな!「中国の意を受けて、日本叩きのために作られた映画だ」と言われているじゃないか。中国政府は喜んで上映させてると思ったのに…。
「いや、政治的判断なんです。反日感情を煽りたくないのでしょう」と李監督は言う。そのことを、石平さんに私は聞いた。「月刊日本」の出版パーティの時に。「うーん、それは逆じゃないですかね」と石さんは言う。
「あの映画を見たら靖国神社は、戦争で亡くなった人を慰霊する神社で、参拝してる人も普通の人だと分かる。亡くなった人、戦争で死んだ人を慰霊する気持ちは中国人も同じです。だから、この映画を見て、中国人民が靖国神社を理解するのが怖いのでしょう。だから上映させないのだと思います」
ウッと思った。中国政府の〈読み〉が深いと思った。確かに、これはありうる話だ。
日本人が中国で麻薬で捕まり、死刑になったことがある。最近の話だ。日本政府は必死になって助命嘆願をしたが、中国は聞く耳を持たない。国内法に従って粛々と刑を執行した。何も日本人だから特別厳しく対処したわけじゃない。前にイギリス人も麻薬で死刑にされている。
「でも、アメリカ人が捕まったら、元大統領を派遣して連れて帰ったんじゃないですかね」と私は聞いた。「それはやったでしょうね」と石さんは言う。
北朝鮮でアメリカ人が逮捕された時、クリントン元大統領が北朝鮮に飛び、連れて帰った。裏では謝罪したり、援助の話も出たのだろうが。ともかく、連れ帰った。中国で逮捕されてもそうするだろう。アメリカは中国、北朝鮮、ロシアと対立している。だが、「話し合い」「交渉」のチャンネルを水面下で強固に持っている。日本にはそれがない。
石平さんは中国を捨てて、日本に帰化し、中国を徹底的に批判している。だから、「もう二度と中国には行けないんでしょう」と言ったら、違う。行けるのだ。「この前も、帰ってきました」と言う。エッ?「その点、中国は大人なんです」。お父さんは亡くなったが、お母さんは健在だ。親類もいる。「弾圧されてないんですか?」と一水会フォーラムの時、参加者が恐る恐る聞いた。こんなことを聞いちゃマズイかな、という感じで。
「弾圧は全くないです」と石さんは言う。そうなのか。北朝鮮とは全く違うのだ。でも、周りの人たちは違うだろう。「あの石平の親類だ」「売国奴だ」と言って冷たくされたり。あるいは村八分にされたり。大変じゃないのか。
「それもありません」と石平さんは言う。「私が日本でどんな発言をし、どんな本を書いてるか、政府は全く発表しません。批判もしません。そんことを教えて、かえって〈宣伝〉になったら困るし、私の言ってることに関心を持っても困る。と思っているんです」
そうなのか。大国中国は〈大人〉なんだ。又、それをはっきりと明かす石平さんも〈大人〉だと思った。中国を捨てた人ならば、そして批判するならば、わざと自分のことを「弾圧されている」「こんなに闘っているから攻撃されてる」と、大袈裟に言う。石平さんはそれがない。素直な人なんだ。正直な人だと思った。
だから「文化放送」でもこの話をした。10月6日(水)だ。石平さんの話をした。映画「靖国」の話をした。又、アメリカならば、もし死刑にされようとしたら元大統領が飛んでいって助けるだろうと。北朝鮮に捕まったアメリカ人を助けるためにクリントン元大統領が飛んで行って連れて帰った。裏では謝罪もしてるだろうし、賠償金も出してるかもしれない。
しかし、「よくやった」とアメリカは大歓迎だ。日本はこうしたチャンネルがない。力のある大人の政治家はいない。
田中角栄が生きていたら、中国とはすぐに話し合い出来た。今頃になって、「田中角栄が偉かった」「捕まえるべきじゃなかった」と言ってる雑誌があるが、遅い。実力のある、政治家は次々と捕まっている。ダーティでも対外的に使える人間は使ったらいいのに。もったいない。
又、辞めた首相で中国、北朝鮮にチャンネルのある人間は外交に使ったらいい。中曽根を中国に行かせる。小泉を北朝鮮に行かせる。鈴木宗男をロシアに行かせる。ずっといてもらってもいい。(刑務所に入れるのは「国家の損失」だ)。そうやって働いてもらったらいい。
明治政府の人間たちなら、そうやっただろう。函館に立て籠もり、最後まで反逆し、「エゾ共和国」をつくった榎本武揚や大鳥圭介だって、本来なら、即、死刑だ。反逆罪だし、別の国家をつくったのだし。
それなのに、ちょっと刑務所に入れただけで、釈放し、政府高官にして国のために使っている。国際法の知識は豊富だし、このまま殺しては勿体ない。「国家の損失」だと思ったのだ。明治政府は「大人」だ。中国にひけをとらない。だから日清、日露でも勝ったのだ。
別の言葉で言えば、「手段の民主主義」が徹底してなかったから、「結果の民主主義」が実現できたとも言える。明治時代は、全員に投票権はない。限られた人間だけだ。国家の重要なことも、少人数で決められていた。「手段」としては民主主義ではない。
だが、その少人数の「叡智」と「責任感」によって、結果としては良い方向に行った。国家を守り、国民のためになった。つまり、「結果としての民主主義」をもたらした。
じゃ、今、それをやってみようかと言っても無理だろう。全ては「民意」に問えというし、ポピュリズムの時代だ。「人気」のある「クリーンな」人間が政治家になり、力のある、ダーティな人は追放される。明治政府のようなことは出来ない。いちいち事前に全国民に「説明」し、「理解」してもらわなくてはならない。
又、マスメディアが常に文句を言う。誰が首相になっても、半年もしたら、飽きてしまい、「もういい!」「こいつもダメだ!」と言う。次々と「かえろ!」と言い出す。国民も愚かにも、「そうだ!」「そうだ!」と叫ぶ。もっと、もっとクリーンで、もっと力のある、もっと立派な人がいるはずだ。と言う。
でも、考えてみたらいい。そんな人はいない。この程度なのだ。だったら、「最低2年は辞めさせない!」と言って、続けさせたらいい。それなのに、何もしないうちから、「今度もダメだ」「もっといいヤツがいる」と騒ぐだけだ。新聞は、批判しなくては売れない。そのために書く。そして、政局は転々とする。全く「国益」にもならない。
中国の政治家はプロだ。それに対する日本の政治家は皆、アマチュアだ。だから外交では勝てるわけはない。と書いてた新聞があった。お前たちが、文句を言って引きずり下ろすからだろうが。ロシア、北朝鮮、アメリカは、もっとプロだ。日本はまるで、プロ野球に挑む高校野球のようだ。大相撲に挑む高校相撲部のようだ。だから、たとえダーティでも、力のある政治家を使え。元首相などの、引退した人間を外交に使え。と私は思う。
それでもダメならば、仕方ない。外国から借りてきたらいい。野球やサッカーも、外国人監督を使っている。外人選手もいて、日本の「国技」大相撲だって、モンゴルやヨーロッパの人々でかろうじて守られている。世界には政界を引退したが、実力のある大物政治家はゴロゴロいる。ロシアのゴルバチョフやイギリスのサッチャー、アメリカのカーター、クリントン…と、そんな大物政治家を、日本政治の「監督」として借りてきたらいい。
首相だと問題があるが、「外相」ならいいだろう。やってくれるよ。人脈もあるし、経験も能力もある。又、日本政治に対するカンフル剤にもなる。「やはり、こういう大物の政治家を日本も育てなくてはいかん。国内で権力争いをしてる場合じゃない」と国民も目覚めるだろう。
文化放送の時も、そんな話をした。「いやー、右翼の鈴木さんからそんな話を聞くとは思いませんでした」と言われた。「じゃ、いっそのこと、現役の若手の政治家はどうですか!」と言う。それもいいか。
でも、それではかえって問題が起きる。オバマやプーチンを借りてくるわけにはいかないし。実現したら、「日本は植民地になった!」と騒ぐだろうよ。たから、引退した政治家を「外相」クラスで借りてくるのが、ちょうどいい。
あるいは、石平さんを外相にしてもいいな。この人なら「日本人」だから、何ら問題ない。それでいて、中国のことは何でも知っている。民間人から大臣に起用する例はいくらでもあるんだし…。
①10月4日(月)、一水会フォーラムで講演する石平さん(拓殖大学客員教授)。「今、中国国際戦略はどうなっているのか=尖閣侵略の道程=」。今、最も熱い話題ですし、この問題に最も詳しい人です。満員でした。熱弁を振るう石平さんです。
⑤9月27日(月)夜7時、ネーキッドロフト。河野太郎トークライブ。Vol.3。「ねじれ国会を乗り越えて日本の未来をどう創る」。民主党の細野豪志さん、長島昭久さんを迎えて。超満員でした。
河野さんは2人を積極的にオルグ。「今の民主党じゃダメでしょう。2人は自民党に来て下さいよ」と誘う。お二人は、「河野さんの方が我々に距離が近いんじゃないの。民主党に来てよ」と、お誘い合戦でした。
⑥細野豪志さんは以前、「朝まで生テレビ」でご一緒して以来です。爽やかな青年代議士だなと思いました。その後、どんどん頭角を現しました。
この日も、第一部で帰られた。とても忙しい人だ。次の日、中国に飛んで政府要人と談判したんですな。その直後、フジタの社員が解放された。でも、ロフトでは勿論、そんなことには一切、触れない。大したものです。
⑦「やあ、鈴木さん久しぶり」と長島昭久さんに言われました。1回しか会ってないのによく名前を覚えている。「何言ってんですか。よく会ってるじゃないですか」と言われた。慶應大学の小林節先生の教え子だ。一水会の木村三浩氏とも親しい。二人の話をしました。
⑧河野太郎さんのお父さんは、河野洋平さん。おじいさんは河野一郎さん。40年前、三島由紀夫と共に自決した森田必勝氏は高校時代、河野一郎さんを尊敬し、「秘書になりたい」と自宅に行ったこともあります。あの時、秘書になっていれば、今は憂国の政治家です。でも、「三島事件」はなかったでしょう。太郎さんとはそんな話をしました。
⑨9月28日(火)。午後5時から、明治記念館。村上正邦さんが代表の「躍進日本!春風の会」発足記念の会。1000人以上が集まった。大盛会だった。記念講演は中曽根康弘さんと将棋の米長邦雄さん。
続いて、隣室でパーティになりました。朝青龍も来てたのには驚きました。
⑩「村上正邦さんはこれからどう動くのか」と期待と関心を持った人が多かったのです。「若い、本当に国を思う政治家を育てていく」と言ってました。
右が村上正邦さん。私は「生長の家学生道場」の学生だった頃に知り合い、選挙も手伝いました。40年以上前からの知り合いです。中央は、「生長の家」総裁・谷口雅春先生のお孫さん、谷口貴康さんです。
⑫「これは面白い組み合わせですね」と言われました。将棋の米長邦雄さん(中央)。元日本共産党No.4の筆坂秀世さん(右)と。「我々は同志だ!共に闘おう!」と米長さんが2人を抱きかかえています。左右を包含しています。
筆坂さんは最近、宮崎学さんと対談本を出している。『日本共産党vs部落解放同盟』(モナド新書)だ。「又、鈴木さんとも本を出しましょう」と言っていた。ぜひお願いします。
⑭今、発売中の『創』(11月号)です。中森明夫さんとの対談「大逆事件100年の今年、大杉栄が現代に甦る」が載ってます。12ページもあります。四谷の天ぷら屋で対談しました。亡くなったと思ってた見沢知廉氏(作家)もなぜか参加しました。この本を読むと、その「秘密」も分かります。