2009/05/25 鈴木邦男

全集を読もう! 全集だけを読めばいいんだ!
●読書術を語りつくす●

恒例になりました読書対談です。以前、劇団再生の高木尋士さんと筑摩書房の「日本思想大系」について対談をしました。あれから一年が経ちました。高木さんの「全集読み」は、どこまで進んだでしょうか。

この一年、雑誌や対談で「全集」について発言してきました。ぼくも、むさぼり読んだ学生時代を思い出しました。毎月発売される思想全集に胸を躍らせたものです。あの頃の「全集読み」が今のぼくを作ったのです。あの時、「全集」を読んでいなければ、今ここにぼくはいません!

今日は、高木さんとジャーナリズム研究家の関口和広さんと「読書」と「全集」について語りつくします。

①読書は仕事か、それとも…

鈴木では、読書の話をしましょう。ともかく多くを読むことですね。読んでいくうちに早く読めるようになる。そして、一番大事なことだけ峻別する能力がつく。それは、いろんな人の本を読みつけるからだと思うんですよ。全く知らない人の小説を読み解くのは、ものすごい時間かかるもんね。それが、よく読んでるような右派系の人の本だったら、早く読めるし、スピード上げても、重要なところや自分が知らないところには、ぱっと目が留まると思うんだよね。

高木それはありますね。

鈴木先日、サンデープロジェクトで面白い話を聞いたんですよ。勝間和代さんは、月に50冊〜100冊読むという話です。田原総一朗さんが「そんなに読めるんですか。私は頑張っても1日1冊ですよ」と。そのとき、勝間さんが言ったのは「直ぐ読める本と、3時間4時間かけて読む本がある。新書だったら20分で読める」。そんなこと言っていいのかな〜と思うけど(笑)新書が20分で読めるってことは、1日に20冊くらい読めるわけだよね。

高木ぼくは、実際新書を20分では読めませんが、1時間あればだいたい読めますね。

鈴木時間をかけなくてもいい本と時間をかけるべき本の見極めが出来るかどうかという問題だと思うんだよね。本は、基礎があれば早く読める。読みつけない人は時間かかる。それでも、考え考え読んだり、悩んだりするのが一番重要なんだろうなとも思う。スピードアップする必要もないし、数撃てばいいっていうもんでもないんだろうけど、ただ、何冊か読もうと思って読まないと読めないわけです。高木君は、本をどう読む?

高木そういう意味では、まず目次を読みます。目次を読めば中身が全て分かる本が意外にあります。最近の新書の目次は、大見出しがあって、サブタイトルも載ってるんです。そうすると、それだけ読めばほとんどわかってしまう。そして、本文に取り掛かれば、読みやすいですよね。

鈴木なるほど。目次からね。じゃあ、本文の中で「目が留まる」ということは?

高木これは、(と一冊の本を指す)エンゲルスの「空想と科学」(世界教養全集)です。「空想と科学」なんて久しぶりに開きました。そこで、「サン・シモン」なんか出てくると、目が留まります。「オーエン」っていう単語が出てくると目が留まる。自分の興味がある単語やキーワードは、やっぱり目に留まりますね。でも、3年後に同じものを読むと、別のところに目が留まるかもしれません。キーワードに目が留まるというのは、現在の自分の「思考」や「思惟性」に関係があるのではないですか。

鈴木現在の「思考」ね。先日、ちくま書房のPR誌に書いたんだけども、学生時代は、読みたくないのも読んだね。興味がないものも一回読んでやろうと。当時の出版社は読ませようという努力をしていたし、学生の知的な欲求もあった。知らない本を読むのがカッコいいという雰囲気もあった。それらが、今はないね。

関口先日のロフトでのトークショーで、鈴木さんと高木さんが「読者が本を選ぶのではなく、本が読者を選ぶ」と言ってたのが気になってました。このあいだブックオフに行ったら、これがポツンとあったんです。「僕のこと選んでるんだな」って思いました。

鈴木(本を見ながら)「日本のテロリスト」

高木名著ですね、それも。

関口タイトルは知ってたんですが、実際に読んだら、これはやっぱり読まなきゃいけなかった本だったんだなって思いました。その対談で高木さんは、「肉体言語」と言うことを言われてましたが、その時にぼくは、「肉体読書」ということを思いました。読書を習慣化というか、肉体化するということが、僕にはまだ出来ないんですが、高木さんは、冊数が足りなくなると睡眠時間を削ってまで読みますね。その欲求はどうして出てくるんですか。身体に染み付いてるんですか?

高木強迫観念というのはあります。ノルマを達成しないと「罰が下る」という強迫観念ですね。ノルマがあぶなくなると、朝5時に起きて、7時まで2時間読みます。そうすると、1日1冊以上は読めるようになります。

鈴木朝読んでる人は、結構いるね。

高木習慣化じゃありませんが、やり始めると意外にすっきり読めるんです。

関口睡眠時間を削るから、やっぱりちょっとウトウトしたりとかは?

高木そういうときはシャープペンで腿を刺しながら、読みます。

関口ストイックで、右翼テロリストみたいですね。

高木みんなそうでしょうが、仕事中には、眠くなっても眠れないわけです。それと同じなのかなって気はします。読書が仕事ですね。

鈴木でも、読書っていうのは、なかなか「仕事」というイメージがないんですよ。そこまで認知されてないんです。蔑視されてるんです。例えば、学生にとって読書とは、彼らは学ぶのが仕事だから当然だと思うけれども、社会人になったら、ライターであろうと新聞記者であろうと、読書と言うと「余暇」を過ごしてるみたいに思われるんですよね。調べ事として資料を開いてるのとは違うじゃないですか。ライターの人に聞くと、朝からうちで原稿を書いてると奥さんが、(ああ、仕事してるな)って機嫌がいい。でも、横になって本を読んでると「駄目じゃない。仕事してよ。子供だってまだ小さいんだから」って言う。世間では、読書は、趣味で遊びだと思われてるんですよ。

高木〈換金〉されないから、ということもあるでしょうね。書くのは、お金になるじゃないですか。吉本隆明の『言語にとって美とは何か』の中で、ルフェーヴルを引いて、芸術は特殊な労働で、労働ゆえの換金性を問題にしています。読書という「入力」は換金されないので意味がないという問いも立ちますが、でも、それは読書の本質とは全く関係ない。そうは言っても、読書というのは、仕事にはなりませんね。あっ、今思い出しました。仕事になったことがあるんです、読書が!

鈴木映画の「朗読者」じゃないですか?

高木読書をして内容を教える仕事をしたことがあるんです。ある大手上場会社の役員の方でしたが、ぼくがたくさん本を読んでるということで、「本を読んでくれ」と。1冊5000円でした。1週間に4万円から5万円になったんですよ。読んで、内容をまとめるんです。「こういう会合があるからこの本を読んで教えて欲しい」「この著者と会うから、感想を言える様にして欲しい」とか。20代の前半の頃ですね。

鈴木そういうことはあるでしょうね。スタッフが常にいろんなものを読んでいる。トップの人は、全部読むんじゃなくて、付箋を貼ってあるところだけ読むとか、そういう効率的な読み方をしている人はいるでしょう。一冊読んで5000円、それはいいよね。

高木期日を指定されることもありましたし、話題の本を読んでおいてくださいとかも言われましたね。

鈴木社員への訓示の時に「最近こんな本を・・・」って言うんでしょうね。まさか5000円出して読んでもらった本だとは言えないし(笑)。対談者と会うときも、「ここが良かったですよ」なんて言うと、相手は「読んでくれてる」と感動するよね。

高木「著者と会うから」っていうのが一番多かったですね。

鈴木でも、それは良心的だと思う。今はね、そこまで手をかけない。ネットでその人を調べて対談する人がもの凄く多い。それは失礼だと思う。知らない人と対談するのなら、最低3冊くらいその人の本を読むべきだと思う。

②出版するなら新書か、単行本か

高木鈴木さんは、60冊を超える本を出されていますが、何が一番売れましたか?

鈴木『公安警察の手口』ですよ。

高木ここ最近のでは?

鈴木『愛国者は信用できるか』ですよ。新書だからです。圧倒的に。

高木新書って言うのはやっぱり出るんですか?

鈴木新書しかないですよ! 単行本は天下の講談社でも何千部ですよ。新書は最低で今1万部。普通だったら1万2000部〜3000部。あるいはもっと凄い人だったら、新書で30000部とか40000部とか。ぼくの本で単行本は、書店のどこにあるかわかんないじゃない。社会思想のコーナーなのか、新刊書のコーナーなのか。新刊書のコーナーに置かれるっていうのは、よっぽどの人じゃないですか。

高木佐藤優さんとか。

鈴木雨宮処凛だとか。3人くらいじゃないですか。後の人たちは、どこに置いていいのかわからないんですよ。単行本っていうのは、下手をしたら1週間くらいで返品されるかもしれない。月刊誌より命が短い。その点、新書は、新書のコーナーがあって、棚があって、1ヶ月は置いてる。それに、安いじゃない。

高木777円とか。

鈴木単行本だったら1500円とか倍以上。みんな「新書」をやりたいんです。「新書以外は嫌だ」って、思ってる著者が多いと思いますよ。僕も『愛国の昭和』の時、「新書でお願いします」って言ったら、 「これだけ一生懸命書いたんだから、単行本にしないともったいない」って言われた。 新書は、安いし、読みやすいって思うから、買うのかも知れない。目にも付く。それはもう全然違う。僕も新書しかやりたくないくらいです。じゃあ、新書は小さいから手間が半分か、と言うと、そんなことはない。紙代なんてほとんど違わないんだから。(版を)組むのとか、全部同じじゃないですか。だから、別に安くないんです。

高木作るのが安いのかと思ってました。

鈴木本を作るということに関してはかかる金額は同じですよ。じゃあ、なんで10000部刷るのかって言ったら、確実に売れると思うから、と言うことなんですよ。だから、安くても大丈夫って。それだけ売れると思わないと作らないってことですよね。

高木これも(『愛国の昭和』)新書にしたかったですか?

鈴木したかったです。それと、60冊の中には、売れない本も一杯あるし、小さな出版社もある。でも、僕ごときに依頼してくれるんだから、いただいた話は全部受けてやってる。 あまり売れそうもない出版社でもやってます。ここじゃもったいないから、他のとこに持ち込むなんて裏切り行為はできないでしょ。話が来たから、「それじゃやってみよう」と思って書きますよ。極端に言ったら、自分で300部買って、300部を一冊ずつ送って、それだけで郵送料が15万くらいかかる。下手したらマイナスかもしれない。それでも、出してもらってありがたいと思ってますよ。

③いよいよ〈全集〉の話です!

鈴木『よりみちパン!セ』(既44巻)と、ちくまの『日本思想大系』(全86巻)、『世界教養全集』(全38巻)は、全部読んだんでしょ?

高木まだですよ(笑)

鈴木全集を読むって言うのはね、絶対必要だ、って思うんだよね。誰でも食わず嫌いの本がいっぱいあるんです。ちくまで書いたんだけども、『戦後日本思想大系』が出て、『「超国家主義」とか「アジア主義」とかは必ず読むじゃないですか。そうすると、せっかく何冊か読んだんだから全集全部を読破してみようかな、って読む。そうすると、左翼思想もアナーキズムも、なんだ、案外俺たちと考えてることは似てるじゃないか、ってことが随分ありましたよ。ちくまの思想全集がなかったら、知らなかった思想家、知らなかった思想が随分ありますよ。

高木それは、僕が今思ってることです。読めば読むほど自分がわからなくなるんです。何もかも正しく思えるんです。「社会主義」というのは正しい。「アナーキズム」もやっぱり正しい。「マルクス主義」「新保守」も正しく思える。思想大系を読んで知った思想家に驚くばかりです。知らない思想家ばかりですよ。

鈴木丘浅次郎なんかは、北一輝ファンしか読まないでしょ。北一輝はそれを読んで、進化論を学んだっていうから。

高木今、『近代日本思想大系』に取り組んでいますが、それよりも『世界教養全集』が面白くて仕方ないんです。

鈴木それはやっぱり、日本と世界の規模の違いだろうね。

高木読み物として面白い編集になってますね。読まず嫌いがないように作ってあります。高校3年間でこれだけ教えれば、化学も歴史も文学も数学も、全て教えられるんじゃないですか。大学の一般教養もこれを順番に読む。

鈴木わざわざ学校行って、先生の話聞かなくてもいいよなぁ。本を読むって言うのは、人生の一番の基本だね。学生の頃はね、左翼の人たちといろんな話をしたし、そういうの読まなきゃいけないと思ってた。今の若者たちがトレンディードラマを見ないと話についていけないのと同じですよ。だから、今は「共通の話題」がどんどん低下してってるんですよね。

高木『パン!セ』もそうですよ、鈴木さんに言われなかったら、読まなかったですね。

鈴木あれは、中学生用なんですよ。でも、全部読んだ中学生がいたらすごいよね。大学生でも読破はスゴイよ。

関口新書を1時間で読めるならこれは・・・

高木それがそうでもないんですよ。2時間くらいかかります。なぜか、『パン!セ』の方が時間かかりますね、新書より。

鈴木時間は、「作らないと」ダメだよね! 読む時間とか、写したりメモしたりっていう時間については、意図的に作らないと「仕事でない」と思われているから、なかなか取りづらいよね。

高木仕事じゃないと思われてますね。だから無理して読むんですよ。今年の読書ノルマは月に1万ページ。来年はkgでやってみようと計算したんですよ。鈴木さんの提案は、月に30kgでしたよね。『近代日本思想大系』は一冊、大体500g、文庫本一冊は、大体140gで、新書は170gくらいです。で、30kgっていうと、全集モノを60冊ですよ(笑)鈴木さんは、月に「自分の体重」と言ってましたが、月に60kgは大変ですよ!月に60kg、年間で720kg。1t近い本が1年間で部屋に溜まるんですよ! 自分の年収では賄えない。カンパのお願いをするようになりますよ。「誰か本を500g送ってください(笑)」

④読書? インターネット? 漫画? 映画? 読書を取り巻く環境

高木ぼくの読書は、やっぱりノルマです。性格なんでしょうが、昔からノルマを課すクセがあったんです。ぼくが育ったのは山口の日本海に近い田舎で、娯楽なんかなにもない所でした。ゲームセンターも映画館も劇場もない。コンビにもなくて、遊ぶのは、海や山。そんな町で、本屋は文房具屋と兼ねて1軒しかなくて、新潮と角川と岩波の棚しかなかったんです。それで、中学を卒業するまでに、新潮を全部読もうと。「あ」から読んでいくんです、順番に。

鈴木環境はあるよね。昔は家を建てるとか、家を借りたりすると、『世界文学全集』を並べて、『ブリタニカ百科辞典』を並べてたものです。そして、それらを買っただけで安心して読まないんですよ。でも、子供たちは読むんです。(これなんだろう)って子供が興味を持った時に読む。本があるって言うのは、いいことだよね。知的環境がある。そういうのが全然ないんだよね、今は。

高木先日、友人の子供さんと会ったんです。小学校6年生なんですが、パソコンを普通にやるんですよ。インターネットでゲームを探したり、ダウンロードしたりしてるんです。本を読んでる気配は全然ありませんでしたよ。

鈴木インターネットは凄いよね。

高木キーを押すだけで本が探せ、本が買えるというのは恐ろしいほどの便利さです。全集でも、検索すれば、どこにあるのかわかって、買えるのです。

鈴木昔だったら、神田の古本屋を毎日探し廻ったよね。今は一瞬で探せるからね。本を読みたいって言う人にとってはものすごく便利になったね。ネットでいいことは唯一それだけだね。あとは何もない。

高木あの便利さと無為性を秤にかけて、利用者がどうするかですね。

鈴木便利っていうことで言えば、あらすじで読む世界文学全集っていう本があって。

高木どうなんですか、あれは。

鈴木例えば『カラマーゾフの兄弟』で大審問官の話した三男は何て名前だったかな〜とか、そういううろ覚えのものを確認する為にはいいね。それ以外は何もない。全部読んで探すって言うのは大変じゃないですか。実際、自分は昔読んだんだから。「あらすじ」本を利用する資格があるだろうって思ってる。それに、「漫画で読む」古典シリーズも、

高木本物を読んだ人はOK(笑)

鈴木でも、あれで読んだ気になるのは卑怯だよ。

高木三島由紀夫、太宰とかも、一冊で文庫で出てるんですよ。ナビだっけ。

鈴木ずるいよね。入門書として、あれを読んで、次に本物を読むんだったら、まだいいと思うよ。読むのかな?

高木「漫画で読むシリーズ」が本当に読書の導入になるのであればと思います。鈴木さんは、「新保守」読みました?

鈴木読んだ。2種類あって、1冊しか読んでないけど。本を読まなくなったから読ませようとして、出版社がいろんな努力してるっていうのは評価するけども、映画のほうがいいじゃないかな。

高木映像で見るとまた違いますからね。

鈴木我々にとって、文章を書くというのは仕事だから、それを目指してるんだから、何が一番参考になるかって言ったら、文章だよね。その点やっぱり映画っていうのは、映像目指す人にとっては参考になっても、我々にとっては参考にならない。そういう意味で一番感じたのは、島尾敏雄の「死の棘」ってあるじゃないですか。暗い、女の嫉妬に苦しめられる、逃げ廻るって。あれが映画だとただ暗いだけで、それが文学になると、文章の綺麗さだとか、文章の迫力ってあるでしょ。我々にとっても参考になるときがあるじゃないですか。きちんとした作品って言うのは読まなくちゃ駄目だなって。

高木勉強になるのは、「人間失格」「斜陽」とかは全部書き写しました。原稿用紙で厚さ5cmくらいになるんですよ。「死霊」は全部じゃないですけど、抜きましたね。そうすると、助詞の綺麗さとか、(ああ、ここで「に」って言う言葉が使えるのか)とか(「の」って書けるのはすごいな)ということがすごく勉強になりました。

鈴木昔の作家志望の人たちはよくやってたよね。志賀直哉なんかは短いしね。太宰や安吾は、長いからやっぱ大変だよね。

高木「人間失格」はすぐですよ。

⑤全集を読むことの真の意義・読書の真の意義

高木PR誌ちくまに鈴木さんが書かれていたんですけど、全集はまだまだありますね。

鈴木『世界の名著』は読みやすいよ。81巻かな。あれは画期的だった。資本論なんて、高いじゃない。それに大学の教授が書いてるから難しい。優しく書くと自分の権威が落ちると思って、わざと難しく書いたりしてる。意訳は邪道だ、直訳こそ本物だと。日本語になってないものこそいい訳だと。そんな神話があったんですよ。ところが、『世界の名著』は、翻訳革命だ! って、ものすごい読みやすかったね。

高木思想系の〈全集〉には、同じ思想家が何度も取り上げられたりもしてますよね。

鈴木『世界の名著』で読んだものが、『世界の大思想』にまた入ってるんだよ。しょうがないから、ノルマとして全部読む。マルクスとか、レーニンとか何回も読んだよね。

高木全集じゃないと一生手に取らなかった人たちがいますね。「和辻哲郎」もそうでしたし、「林達夫」もそうでした。『日本思想大系』はまさに読むべきものが入ってます。そして、『世界教養全集』は、タイトルどおり教養の宝庫です。文学・芸術・科学・医学・自然・数学・魔術・歴史、全て入っています。

鈴木ろうそくの話とかね。

高木ろうそくとか、微生物とか、顕微鏡とか。アルプスとエベレストの登山記録を一冊にまとめてたりとか。

鈴木一度読んでるのを飛ばしたりしないよね。ノルマにならないもんね。

高木そうですね。「空想と科学」なんてもう何度も読みましたよ。最初の序文とか、もうめんどくさいんですけど(笑)。

鈴木漫画もノルマとして読むのかな? 例えば手塚治虫だったら、ノルマとしていれてもいいと思うけどね。『戦後日本思想大系』の「ニヒリズム」には、漫画が入ってるでしょ。

高木水木しげるの「一万人目の男」ですね。でも、漫画をノルマに入れたらずるいでしょ(笑)

鈴木初めてですね。漫画を思想として取り上げたのは。30年か40年前の本でしょ。それでもうこんな斬新なことやってる。今は、こんな本を作れないじゃないかな。

高木作れないでしょうね。ちくまは、もう出さないんですか。

鈴木出せばいいのにね。「やってください」よって言ってるんだけど。

高木商売にならないっていうんですか。

鈴木そう。といって、これほどの〈全集〉を文庫にしたってつまらないしね。「ニヒリズム」や『「超国家主義」だけでもやればいいのに。そして、佐藤優とか、いろんな人に解説書いてもらったり、対談したりすれば売れると思うよ。我々の世代とか、もうちょっと若い世代も含めて、いろんな意味でモノを書いてる人って言うのは、あの思想大系が、全部基礎にあるよね。それをはっきり言うかどうかは別にしてね。

高木前に対談させていただいたときに思ったんですけど、資料としては一級ですね。何かを書くときに、資料をインターネットで調べたりもするんですけど、信頼はおけないんです。だからインターネットで調べて、原典にあたるという方法を取ってます。

鈴木大学とか専門学校で、レポートを出させると、みんな同じレポートで出てくるんだよね。最初の人のレポートを見たときに、随分と数字も出てるし、やたら詳しいな、すごいなって思って、次の人を見たら、次の人も同じで。なんだ、ネットかって。そういう意味じゃこれから、レポート出させるって言うのは意味ないんじゃないかって思っちゃう。

高木それが問題になったんですよ。コピー&ペーストって方法ですね。それで、提出された時点で、それがコピペかどうか判断するソフトまで出来たんですよ。そういうことまでしなきゃいけないんだって(笑)。鈴木さんは学校でレポート出させたりするんですか?

鈴木しますよ。ジャナ専で。

高木毎月ですか?

鈴木前期と後期、年に2回。田母神論文についてどう思うか、とか。三島由紀夫はどう思うか、とか。連合赤軍について、とか。

高木全部政治ですか(笑)

鈴木そうするとみんな似てるんだよね。

高木それはやっぱりインターネットで引いてる感じがします?

鈴木します。レポート出すってこと自体がもう駄目なんじゃない?もっと言ったら、先生が教えてる意味がないかもしれないよ。喋ってる人のルーツをパソコンで調べればいいわけだから。だから、教師はいらないってことになるよね。

高木インターネットがあって、本があったら、先生はいらないですよ。

鈴木本はこれから復興するでしょ。

高木ぼくは、すると思います。

鈴木中島岳志が言ってたけど、「『諸君!』や『正論』を読む人は、『諸君!』や『正論』は読まなくていい」と。「『週刊金曜日』が好きだって言う人は、それは読まなくていい」と。その人たちは自分の考えを確認するためだけに読んでるんだから。新しいものとか、自分を否定するものとか読まないじゃない。そういう勇気がないんです。その点、思想全集だったらね、それを読むことによって、さっき高木君が言ったように、それが全部正しいってわけじゃないけど、自分の足元がぐらついてくる。そういう危機がないっていうのは、それは読書じゃないんだよ。

高木そうですね。読めば読むほど、よくわからなくなる、不安定になるって感じですね。そういえば、日本思想大系の中に天皇陛下を扱ったものは一本もないんですよ。もちろん、言葉としては出てきますが。

鈴木そうだった?いや、全然気が付かなかった。「アジア主義」とか『「超国家主義」とかあるじゃない。

高木いわゆる共産党の言う天皇論を語るものはありますよ。天皇論を否定したり肯定したりするものはありますけど、天皇陛下、天皇という歴史を扱った論文というのはないですね。実はいっぱいあったはずなんですよ。

鈴木今まとめるとしたら、入ってくるよね。グローバリズムだとか。

高木天皇、グローバリズム、北一輝からの思想ですね。北一輝の流れの、日蓮からの宗教的日本論、っていうのが、これにはないです。

鈴木北一輝にしろ、

高木石原莞爾、井上日召、その辺ですね。

鈴木田中智学もね。

高木それにつながっていくという。その辺の思想っていうのは、成熟してなかった思想なんでしょうし、どんな思想も結局、宗教に戻っていくという、宗教性を持ちえた人が残っていく気がします。思想を宗教に結びつけて安心したのか、その場所は必然なのか。宗教的バックボーンをもつ思想はとても多いんですね。

鈴木これから作るとしたら新宗教から、生長の家系、オウム真理教、幸福の科学とか、

高木幸福の科学、オウム真理教あたりを止揚して、体系的にまとめられれば面白いと思います。でも、大本教はあるにしても、オウム真理教は新宗教とは認められてないんじゃないですか? 

鈴木100年くらいたったら、大本教のような取り上げられ方をするかもしれないよね。そういうのやってくれればいいのに、やらないしな。

高木『愛国者全集』というのもいいと思います。

鈴木『愛国者全集』か、いいねぇ。そういえば、生長の家の出版部として、日本教文社があったんだけれど、「国史」シリーズっていうのを出してたんだ。いい本いっぱいあったと思うんだけど、今は全然出さないね。売れると思うんだけどな。それこそ、日本人のための歴史だ。日本人としての誇りを取り戻すためにもいい。

高木『愛国者全集』には、『鈴木邦男愛国三部作』は間違いなく入りますね。

鈴木いやぁ、愛国的じゃないからね。愛国三部作なんて・・・売国(笑)。でも、関口君が言ってたけど、『「蟹工船」を読み解く』と『愛国の昭和』は天皇制に疑問を持つ本だって。

関口AERAに出てたんですけど、鈴木先生が最近書くものは、最後に大御心になるって言ってるんですけど、それに対する説明はないですよね。ただ、「大御心」って言葉を出してるって言うか。知るようなものじゃないのかもしれないんですけど。

高木なるほど。そうですね。ぼくは、『愛国の昭和』を読んだ時に、(鈴木さん、どうしたのかな)って思いましたよ。

鈴木左傾化したと思った?

高木「鈴木さん、もしかして、どっかに癌が見つかって余命を宣告されたのかな?」って思いました。それで、(残さなきゃ)って慌てて書いたのかと。鈴木さんの一つの遺書なんだろうなと、今も感じています。全集に話を戻しますが、鈴木さん、『よりみちパン!セ』は全部読みました?

鈴木全部読みました。食わず嫌いだったのがありましたよ。重松さんはすごいな〜と思いましたよ。

関口『みんなの悩み』ですね。

鈴木数学の本が2冊くらいあってとても勉強になった。

高木あれ、面白いですね。叶姉妹のは?

鈴木困っちゃった。

高木困っちゃいますよね。

鈴木保健体育もそうだったけど、よく中学生用にこんなのいれるなと思って。僕の本もそうだけど、中学生に読ませる本かと思って。

高木中学生の為にはすごいいい本ですよ。僕は、こういったことを中学生のときに知ってたら、多分、もっとちゃんとしてます。悪いことしたら、こういうことになる、とか。男の性とか女の性とかってありますよね。

鈴木左翼の人のがないんじゃないの?「失敗の新左翼」は。

高木右側も鈴木さんだけでしょ?

鈴木左側で書ける人いないのかな?

高木荒さんあたりがいいんじゃないですか?「失敗の左翼」。塩見さんも有力です。

鈴木あの人は失敗を認めないから(笑)。荒さんか植垣さんか。あとはちょっと書ける人いないだろ。

関口高木さんは中学生くらいから、マルクスとかそういうのを読んでたんですか?

高木中学の時に、ドストエフスキーにはまりました。高校ではまったのが、ヘーゲルと埴谷雄高。ヘーゲルは面白かったですね。躍動感に溢れて、わくわくしながら読みました。

関口そういうの語る友達はいるんですか?

高木そういえば、いなかったですね。

関口ヘーゲルとか埴谷雄高を読むって、みんなから気持ち悪いって言われてたんですよ、絶対(笑)

高木本の話はしなかったですね(笑)。

鈴木どこで読んでるの?自分のうちで読むの?机に向って。

高木実家は目の前が海なんですよ。だから、子供の頃は、釣り道具を持って外で読んでることが多かったですね。暗くなったら、家に帰って部屋で読みました。

鈴木孤独な子供だね。今はどこで読むの?

高木やっぱり、家ですね。ほとんど机について読んでます。本を読んでて、バイトを3つも4つもクビになりましたよ。読み始めると面白くて、バイトの時間に「すいません、今日具合が悪いので休みます」っていうのが続いてクビ、です。

鈴木ヘーゲルや太宰治を読んだりする方が重要だよ。それは正しい選択です。

⑥読書の話は尽きない。読書をすればほとんどのことは大丈夫だ!

高木欲しい本ばかりでした。紀伊国屋に行くと、上から下までずっと見て、あれ欲しいこれ欲しいとか思いながらも、金がないわけです。

鈴木そういうときに、本が読める環境があるかどうかは問題だろうね。ぼくが産経新聞いる時、会社の1階が紀伊国屋書店で、本をサインで買えるんですよ。そして、月末に給料から引かれる。だから、金がないときに、特に本を買ってたね。映画を見に行こうと思っても金がない。しょうがないから本でも買うかって。無料で本を買ってる気がして、まとめて買って、給料以上に本買ったこともありましたよ。そういう時はボーナスで引かれるんです。

高木救済措置はあるんですね。

鈴木あれは有り難かったね。

高木今はもう全集が山積みになってますし、送ってくださる方もあるんです。「これは読みましたか?私はもう読んだから」って。

鈴木劇団員と読書会するの?

高木しませんね。みんな本を読んでるのかな。

関口演劇をやるという人は、感性の人だからあまり読まないんじゃないですか?

鈴木高木君みたいに家にこもって本ばかり読んでたら、観客の前で喋ったりとか、暴れたり、演技をしたりとかできなくなるんじゃないの?そんなことないのかな?

高木(笑)それは、また別問題の気もします。

鈴木今度は、思想の一つをテーマにして芝居やってもいいんじゃない? 「ニヒリズム」とか『「超国家主義」とか。いろいろな論文を抜粋しながら、一つのストーリーにして持っていくという演劇です。

高木いいですねえ。それならすぐ出来る気がします。『劇団再生の次の芝居は「保守」です』『来月は「新保守」をやります』。そして、「右翼」「新右翼」と続ける。面白そうですね。『「革命の思想」の芝居。登場人物は、埴谷雄高・徳田球一・荒畑寒村、竹内好です』って。

鈴木それいいじゃない!やろうよ!

高木企画してみますよ!

鈴木高木君は、読んだ全集の全部を覚えてるわけじゃないでしょ?

高木そうですね。あそこにこんなものがあった、こんなものがあったかな、っていうくらいです。

鈴木ぼくは、ほとんど全部忘れてますよ。忘れてもいいんですよ。強烈に印象に残ったものは、影響を受けてたりするから。

高木そうですね。何百年も生き残っている思想や、それを現代に媒介する本の力っていうのは凄いと思います。家の中で時間を超越していくんです。

鈴木ヘーゲルやカントっていうのは時代を超えて残ってるよね。

高木今は古いと言われる思想でも、あらためて読むと現代に通じる問題提起が必ずあるんです。「思想家」といわれる人たちの洞察力の深さに驚かされるばかりです。

鈴木日本の批評家っていうのは、その時々に対する批判だから、その状況や事件が終っちゃうと残らないよね。

高木10年20年というスパンですからね、ほんとに時局的なものばかりです。

鈴木スターリンだとか、幸徳秋水だとか、行動一つで残ってるじゃない。三島由紀夫と、見沢知廉もそうなるでしょうし。

関口読書は習慣がないとほんとに駄目ですね。読書の習慣は、若いときにないと駄目なんですかね。

鈴木年を取ってから、本に目覚めた人もいるんじゃないですか。

関口ノルマにしても読書を継続していくというのは、なかなか難しいです。

鈴木発表する場を作ればいいんじゃないのかな? 本だけ読んでいても自家中毒になっちゃうじゃない。『本を読んでるのは単なる楽しみじゃない』って、割り切れる部分はぼくにはある。自分は演劇をやるんだとか、論文を発表するとか、そういうのがないと難しいとは思うよね。

高木アウトプットがなければ、死にたくなるかもしれない。読めば読むほど足元がぐらつきますから。

鈴木昔はそういう人がいっぱいいたんだよ。教養人とか、読書人って言葉があったもんね。彼らは何かを発表するわけじゃないんだ。そういう人は今の社会じゃなかなか生きられないだろうね。何のためにそんなことやってるんだ、って。

高木アウトプットの方法としては、インターネットで、自分のホームページで簡単に出来ますね。出力欲求というのはみんなあるんでしょうね。

鈴木本の話をし始めると、いつまでも終わらないけど、高木君は今年は全集だね。

高木そうですね。3種類の全集を読み進めます。

鈴木『近代日本思想大系』『世界教養全集』『世界の名著』だね。関口君は?

関口読みます! 読書の習慣化に向けて頑張ります。

鈴木読みましょう! 読んでこうして語りましょう。たくさんの本を読んで、みんなと語り合えばいいんです。

【ありがとうございました】

現代日本思想大系/世界の名著/世界教養全集
現代日本思想大系/世界の名著/世界教養全集

 今週は特大号です。普段の倍以上です。5月4日(月)、喫茶店ミヤマの会議室で行った「読書座談会」(2時間)を一挙掲載しました。2〜3回に分けようかとも思ったのですが、熱い思いを一挙に伝えたくて、こうなりました。
 テープ起こしを初め、編集作業は全て、高木尋士さんと「劇団再生」のスタッフがやってくれました。感謝感激です。本当にありがとうございました。
 「劇団再生」は8月の「見沢知廉生誕50年」の芝居を控え、忙しいところなのに、本当に申し訳なかったと思います。でも、おかげでこんないいものが出来ました。皆さまも、じっくり読んでみて下さい。

【だいありー】
「SPA!」(5/26号)
  1. 5月18日(月)「返却期限が過ぎてます。早く返してください」と電話があったのです、慌てて返しに行く。別に、サラ金ではない。図書館だ。ちょっと遅れたことはあるが、催促の電話が来たのは初めてだ。私の借りてる本の中に、次に借りたいと希望してる人がいるそうだ。でも、どの本だろう。『世界の名著』の『ヴォルテール・ディドロ・グランベール』(中央公論社)かな。こんな本は私以外、借りないだろう。高木氏かな?
     ディヴィット・ブロックの『ノーベル賞受賞者の精子バンク=天才の遺伝子は天才を生んだのか』(早川書房)かな。グータラな夫の精子からはグータラな息子しか生まれない。それでノーベル賞受賞者の精子をもらって天才を産もうと目論んでいる主婦か。あるいはEDの編集者の妻か?
     もしかして、森村誠一の『小説の書き方・実践篇』(角川oneテーマ21)か。会社で、いじめられながら、いつまでも、OLやってても仕方ない。よし、小説家になって自立しようか、と思ってるんだろう。鈴木信一『文才がなくても書ける小説講座』(ソフトバンク新書)かもしれん。
     あるいは、佐伯啓思の『日本の愛国心』(NTT出版)か。これには私の本も紹介されていた。これを借りたいと思った人は、脱サラして、「愛国検定」を受けて、「一級愛国士」になりたいと思ったのだろう。
     いや、裁判員制度の本を4冊借りてるから、これかもしれない。5月21日からの裁判員に決まって、慌てて勉強してる人か。うん、きっとそうだろう。
     図書館では1回に10冊まで借りられる。期間は2週間だ。私は、10冊ずつ借りている。これだけで、月に20冊だ。他に、送ってもらった本、自分で買う本、万引きした本(あっ、これは今はやってない)…と、月に40冊は読んでいる。
     去年までは、「月30冊のノルマ」だったから、比較的に楽だった。でも、劇団再生の高木氏が月に50冊位、読んでるというし、勝間和代さんは50冊から100冊だというし、佐藤優氏は(「速読の術」を使って)600冊読んでるという。焦る。それで、とりあえず「40冊ノルマ」にした。
     この日、夜は、久しぶりに柔道に行った。忙しいが、運動しないと、ますますメタボになる。「ボーッとした、メタボのおっさん」と言われちゃう。「忙しいから行きたくない」という「私」を、「そのかわり、帰りにロイホで3時間、本を読ませてやるから」と、「もう1人の私」が説得して、無理に行かせたのだ。複雑な私です。分裂症です。
「サイゾー」(6月号)
  1. 5月19日(火)昼、取材。7時から一水会フォーラム。高田馬場サンルートホテル。山田吉彦先生(東海大学教授)の「日本の領土が危ない」。知らないことも多く、教えられることの多い講演でした。日本は海に関しては資源大国なんですね。驚きました。山田先生の本をもっと読んで勉強してみます。
     ここで、ニュースです。最近の一水会フォーラムの講演集が、まとまって、この日、発売になりました。『せめぎあう言霊(ことだま)』(鹿砦社・800円)です。『紙の爆弾』6月号増刊として発売されますので、全国書店に並びます。ぜひ、買ってみて下さい。小林よりのり、田母神俊雄、堀辺正史、重村智計、蓮池透、田原総一朗…と、凄い人々が出ています。きっと売れるでしょう。書店でも並んでました。
     この日、一水会フォーラムの二次会を中座して、阿佐ヶ谷ロフトに行く。永山薫・昼間たかし編集『マンガ論争勃発2』(マイクロマガジン社)の出版記念イベントに出る。マンガ論や言論の自由についての活発な意見が闘わされた。
     この日、『週刊SPA!』(5月26日号)が発売された。巻頭座談会が凄い。「林眞須美は無罪である!」。北芝健、石原伸司、私の座談会だ。
〈警察、新右翼、ヤクザ…。相容れぬ経歴を持つ3人の猛者が、司法の腐敗に真っ向から立ち向かう〉

 「初公開!眞須美被告からの鈴木氏あて書簡」も紹介されている。
 「警察の暗部をよく知る3人が、挑戦状を叩きつけた。果たして事件の真相は」とリードに書かれている。ダーティな所にいた3人だからこそ、事件の〈真相〉が見えるのだ。カレー事件については、最も真相を衝いた座談会だと思う。

「現代プレミア」(講談社)
  1. 5月20日(水)午前中、対談。午後3時、映画美学校で、ドキュメンタリー映画『台湾人生』(酒井充子監督)の試写を見る。感動的な映画だった。台湾について、全く知らなかったと痛感した。むしろここに〈日本〉があると思った。終わって酒井充子監督と話をした。
     午後6時半から九段会館へ。「なくせ冤罪!5.20大集会」に行く。「たかじん」や「サンデープロジェクト」などでも取り上げられているが、まだまだ冤罪が多い。又、マスコミや人々の声が、チェック機構になってない。それどころか、「ともかく早く犯人を捕まえろ!」というプレッシャーになっている。そして、「怪しい人物」を焦って捕らえ、早く「自白」させようとする。この「アセリの構図」が冤罪を生んでいる。いろいろと考えさせられた。仙台の「北陵クリニック冤罪事件」の守大助さんのご両親と話をした。「たかじん」を見てますという。「がんばって下さい」と言った。
  2. 5月21日(木)河合塾コスモは、休み。インフルエンザのため。かと思ったら、違う。予備校の授業の調整日でお休みなのだ。それで、急遽、岐阜刑務所に行く。泉水博さんに面会する。千葉刑務所で野村秋介さんの親友だった。友人の病気のために医者にみせてくれと強く訴え、決起。それが〈暴動〉とされた。この「決起」が外にも伝えられ、アラブにいた日本赤軍が「奪還」して、同志にした。そして、フィリピンで逮捕され、再び服役。激動の人生だ。地元の支援者の人と行く。私は初対面だ。でも、よく知っていてくれた。とても喜んでくれた。主に、野村さんの話をした。濃密な時間だった。
  3. 5月22日(金)遅れていた原稿を必死で書く。夕方、打ち合わせ。『現代プレミア』(講談社)に出ていたが、佐藤優氏は月に1200枚書くそうだ。1日40枚か。凄い。その他、講演、対談なども多いし。今度、勉強の仕方を詳しく聞いてみよう。
  4. 5月23日(土)昼、取材。夕方、打ち合わせ。
  5. 5月24日(日)午前10時から午後5時まで、『無門関解釈』の勉強会。
  6. 早見慶子さんの新著『カルト漂流記・オウム篇』(彩粒社・1800円)が発売されました。元「過激派」の著者が体験したオウム真理教。全く新しいオウム論だ。初めは正義であり、愛だったのに。それが何故、あんなことになったのか。真剣だったからか。考えさせられる問題です。読んでみて下さい。
【写真説明】

①週刊「SPA!」(5月26日号)に座談会が出ています。「林眞須美は無罪である」。北芝健、石原伸司、そして私です。

②『サイゾー』(6月号)は特集が「ニッポンのタブー」です。衝撃の特集です。私も書いてます。

③『現代プレミア』(講談社)は「ノンフィクションと教養」の特集です。私も書いてます。〈『テロルの決算』こそが『テロル』である〉

【お知らせ】
  1. 6月15日(月)7時、一水会フォーラム。今売れている『日米同盟の正体』(講談社現代新書)の著者・孫崎亨氏が講師です。
  2. 根津のギャラリー「TEN」で6月12日(金)〜6月21日(日)。映画「実録・連合赤軍」写真展。なお、6月18日(木)は地下鉄・根津駅前の「忍ばず通りふれあい館」B1ホールで、13時半より、「実録・連合赤軍」と「赤軍-PFLP世界戦争宣言」の上映。その後、19時より同所でトークショーです。若松孝二、足立正生、鈴木邦男です。
  3. 7月19日(日)1時、大阪御堂会館。和歌山カレー事件最高裁判決について、辛淑玉さんが語ります。「あの判決って、やっぱりヘン!」。安田弁護士も話します。私も参加します。
  4. 8月21日(金)〜23日(日)。劇団再生の主催で「見沢知廉生誕50年展」が行われる。「天皇ごっこ〜調律の帝国」の舞台化。そして、トークライブとして高木尋士氏と私の「死後に成長する命・言葉・人生」があります。お楽しみに。この日、50才で誕生した見沢氏は、これから、どんどん若くなって、さらに多くの可能性に挑戦するのでしょう。
     トークには、現在、映画『見沢知廉』を撮っている大浦信行監督も3回共、参加することになりました。ご期待下さい。見沢氏本人も特別出演するかもしれません。
  5. 9月12日(土)午後2時。新潟県新発田市生涯学習センターで講演。「大杉栄と小林多喜二」です。
  6. 9月28日(月)午後7時、Parc自由学校で講演します。「天皇制と民主主義」です。
    「Parc自由学校 2009」の受講案内のパンフレットが送られてきた。「連帯のための哲学=生きる場のことばと実践から」のコーナーで私は講義します。パンフレットには、私の「天皇と民主主義」の講義の紹介が書かれている。
〈天皇制と民主主義は両立するのか。天皇制は民主主義の例外か。民主主義の欠陥を補うものか。あるいは、完全な民主主義実現のためには廃止すべきものか。天皇制を「休む」という選択肢も含めて危ないテーマについて考えてみる〉